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zoom RSS レンカクの子殺し

<<   作成日時 : 2006/08/06 16:18   >>

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 最近、奈良と茨城でレンカクが観察されています。この鳥は珍鳥派のバードウォチャーにもてはやされますが、進化生態学で注目される鳥でもあります。

 ローレンツに代表される古典的な動物行動学は、種を重視していました。個体の本能による行動は種の維持に貢献していると考えます。縄張りを持つ動物に見られる攻撃行動は、同種を生息地に分散させ、限られた資源を有効利用することにより、種の維持に役立つ。オオカミは、獲物を殺傷する牙を持ちながらも、仲間を殺すことには決して使わない。同種の殺傷は種に維持に反する行為であり、同種殺しが抑制されていないのは人間くらいである、と。

 ハヌマンラングールの幼児殺しが杉山幸丸に発見されたとき、例外的な異常行動ではないかと批判的な反応がほとんどでした。種の維持を損なう同種殺しは、動物行動学的に説明できなかったからです。個体が種の維持に反するような利己的行動をとったり、繁殖で雌雄の利害が一致せず互いに協力しないことなどは、動物行動学ではありえないことでした。

 しかし、同様の行動が、ネズミ、ライオン、イルカ、チンパンジーなどで次々に発見され、突発的な異常行動ではなく、一定の環境のもとで見られる普遍的な行動であると考えられるようになります。共通しているのは、雄が自分の遺伝子を持たない子を殺すことです。
 進化生態学では、このような行動は雄の利己的な繁殖戦略とみなされています。雄は支配した群れの雌に自分の子を産ませます。雄にしてみれば、群れに残る他の雄の子を育てることに利益はありません。一方で、子を奪われた雌にしてみれば、それまでわが子にかけたコストは無に帰すわけですから、雌雄の利害は真っ向から対立します。古典的な動物行動学では上手く説明できません。進化生態学的には、コストを利益が上回るような行動は進化しうると考えられます。

 子殺しを(雄の)利己的行動とする幼児殺し仮説を補強したのがレンカク(ナンベイレンカク)の子殺しです。エムレンらの論文は、鳥類学雑誌「Auk」に1989年発表されますが、二つの理由で画期的なものです。まずこの子殺しが実験的に誘発されたものであること、それから、雌による子殺しであること。それまでの子殺しはすべて、自然状態で観察された雄による子殺しでした。エムレンらは、雄で起こる行動が雌でも起こりうることを実証したのです。

 羽衣の性的二型はありませんが、レンカクはタマシギ同様、雌のほうが大きく、雌が縄張りを持ち複数の雄と交尾をし、それぞれの雄に抱卵と子育てをさせます。いわば逆ハーレム状態です。このような一妻多夫は、鳥類では少数派で、ラックによれば、0.4%です(鳥類を9000種とすると、36種になります)。エムレンらは、幼児殺し仮説が正しければ、雌雄の役割が逆転しているなら子殺しも雌雄が逆転するだろうと考えました。そして、縄張りの雌を取り除いたとき新たな雌による子殺しが起こるだろうと予測したのです。結果は次のように予想通りでした。
 
 除かれた雌の4組の雛のうち3組が子殺し(または追い出し)され、除かれた雌の縄張り内の5羽の雄のうち4羽が、新たな雌の求愛に応じました。

 この実験は見事な成果をもたらしたのですが、実は後日譚があります。倫理的な問題を指摘され、後に「Auk」誌上で議論されるのです。なぜなら、雌レンカクは捕獲されたのではなく、銃で撃ち殺されていたからです。

 レンカクの子殺しについては、ジンマーの『「進化」大全』光文社p338で読めます。同書ではアメリカレンカクとなっていますが、ナンベイレンカクが正しい和名です。「Auk」のレンカクはNorthernではなくWattled Jacanaとなっていますから。

 

 

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タマシギ♂060816手賀沼
タマシギの♂が2羽、道を隔てた休耕田に休んでいました。 ...続きを見る
鴎舞時
2006/08/16 23:13

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
先週は波崎に出張でした。バーダーのメッカにいながら鳥を見られないなんて。
seichoudoku
2006/08/06 17:13

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