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zoom RSS カザフ-ホイグリン-タイミル・コネクション110221千葉県(改訂110310)

<<   作成日時 : 2011/03/09 23:52   >>

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Possible Steppe Gull (upper)/Heuglin's/Taimyr (lower)カザフ?(上)/ホイグリン(中)/タイミル(下)110221千葉県。
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Possible Steppe Gull (upper)/Heuglin's/Taimyr (lower)カザフ?(上)/ホイグリン(中)/タイミル(下)110221千葉県。
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Possible Steppe Gull (upper)/Heuglin's/Taimyr (lower)カザフ?(上)/ホイグリン(中)/タイミル(下)110221千葉県。
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Possible Steppe Gull 110221 Japan.
カザフ?110221千葉県。2度目の観察をした。今回はほぼ同時に、ホイグリン1羽、タイミル数羽と比較することができた(残念ながらホイグリンとのツーショットは叶わず)。該当個体(以下個体Aとする)のカザフセグロカモメの可能性について、観察の印象と系統地理学的な考察から検討する。
個体Aの一見した特長はなんといっても暗褐色の雨覆である。これはホイグリン(この日見られた個体を指す。以下同様)と比べて同等かやや濃いかもしれない。平均的なタイミルよりは明らかに濃い。個体Aの頭部や腹の白さはやはり目に付く。ホイグリンより明らかに白く、タイミルの白さとも質が違うように見えた。個体Aの白さはタイミルやヴェガの第2回の白さに近い。タイミルの白っぽい個体の白は褐色斑が薄く残っているせいか多かれ少なかれバフ味を呈していた。背の灰についてはやはり微妙だ。ホイグリンと比べるとやや薄く、かつ淡色羽縁が目立つ。タイミルの背は個体差がかなりあり個体Aに近いものから上の画像のようにセグロと同程度の個体も少なくない。体の構造がコンパクトであるのも個体Aの特徴で、画像の♂タイプのホイグリンより明らかに小さく見えた。タイミルの小さいタイプと同等かやや小さ目かもしれない。足はやや白っぽく見えることもあったがホイグリンやタイミルと大差はなく、長さもあまり違いはないようだ。
内側初列のウィンドは個体Aとホイグリンはほぼなく、タイミルには比較的広く白っぽく見えた。なんといっても個体Aの特徴は翼下面の白さである。ホイグリンには褐色斑が密にあった。特に腋羽で目についた。タイミルの翼下面もほぼ同様な斑が見られた。タイミルの翼下面の斑の多少には個体差が見られたが、白っぽく見える個体もバフ色で個体Aの白とは質が異なる。体下面同様翼下面も、タイミルやヴェガの第2回の白に近いと感じた。
前回は晴れた陽のもとで、今回は時折雨のぱらつく曇天での観察であったが、全体的な印象は同様で、個体Aはカザフセグロカモメとして矛盾は感じず、ホイグリンであればタイミルよりではなくカザフよりと思われる。

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大形カモメの種分化は30万年前の新生代第4紀更新世に始まる。現在見られるすべての大形カモメの共通の祖先が大西洋レフュージアとアラル-カスピ・レフュージアに分断された。そして異所的種分化が起こる。前者ではオオカモメ、ヨーロッパのセグロカモメ、キアシセグロカモメ、アルメニクスなどの共通の祖先が生じ、後者ではカスピ、ホイグリン、ヴェガの共通の祖先(カスピ+ホイ+セグロ)が分化した。カスピ+ホイ+セグロは、その後分布を北へ拡大(連続的分布拡大)しながら、カスピと、ホイグリンとヴェガの共通の祖先(ホイ+セグロ)に種分化する。北極海にぶつかると東進し、西部のホイグリンと東部のヴェガに分化する。ホイグリンは比較的最近分布を拡大し、南下した個体群はカスピと接触する。遺伝的分化がさほど進んでいなかった両者に交雑が起こり、カザフが生じた。また、ホイグリンは同様にヴェガとも交雑を繰り返しタイミルを生じた。ヴェガとホイの差は、カスピとホイ以上に分化が進んでおらず、ホイ-タイミル-セグロは単なるクラインの可能性もある。ホイからヴェガまで形態のグラデーションがあるように見えるからだ。であれば、ホイ-タイミル-セグロは生物学的種概念により同種と判断される。以上、Liebersら(2004)Martensら(2007)の文献と実際の観察をもとにした管理人のスペキュレーション。図1も定説ではなく、あくまでも管理人の独断で作成した分岐図なので注意。

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進化の過程で、現在のヴェガがカスピ+ホイ+セグロからどのような形質の変化をたどってきたか、背の灰色の濃さで考えてみる。背の灰色の濃さと分布域の関係を示す図2は2通りの見方が可能である。縦軸は背の灰色のグレースケール(0が白、20が黒を表す)を示し、横軸は方角を無視した分布域間の距離の目安を示す。上に凸の曲線はカスピ+ホイ+セグロからヴェガへの系譜がたどったであろう背の濃さの軌跡(想定される来歴)である。ダーウィンの漸進説が正しければ現在のヴェガの個体群の背の濃さは、はこうした曲線上を飛躍することなく徐々に進化してきたと想像できる。カスピ海周辺地でグレースケール5-6の淡色のカモメとして出発し、北上とともに暗化した。何らかの選択が作用したのだろう(一見グロージャーの規則に反するが越冬地も考慮する必要あり)。そして東進する過程で再び淡色に戻った。
図2は、以上のような通時的な履歴として見ることができる一方で、共時的な現在の種の分布と形質の関係として見ることも可能である(繰り返すがあくまでもスペキュレーションである)。Olsen & Larssonによれば、グレースケールはカスピ5-6.5、カザフ7-8.5、ホイ8-11、タイミル6-8、ヴェガ6-7である。各種の分布域で背の濃さがクラインを示すかは不明であるが、可能性はあると思う。ホイグリンは分布域の南部ではカスピの遺伝子が、東部ではヴェガの遺伝子が交じるので、同様な淡色化傾向が見られると考えることは合理的だろう。南部のホイの淡化は、交雑を前提にしなくても自然選択で説明できる可能性は否定できないが。カスピからヴェガまで背の濃さを図2のような一筋の曲線すなわちクラインと見做すのはあまり現実的ではないかもしれない。遺伝子流動がこれほど広範囲に行き渡っているとは思えない。実際ミトコンドリアDNAについては、カスピとカザフの間に障壁がある。核遺伝子のイントログレッションは不明だが、調べればきっと面白いことがわかるだろう。
さて、赤の横線はカザフの背の濃さの最大値を示す。曲線との交点はaとb二つある。山の左(西)側のカザフと山の右(東)側のホイグリン-タイミル・インターグレードとは背の濃さは等しく、この形質だけでは両者を区別できない。注目の個体Aはホイグリンにしてはやや灰色が薄いわけだが、さてこの山のどこに位置するのか。aに近いのか、それともbに近いのか。そこで山の左右を判別するべく、第2の形質、翼の下面の斑を考慮してみる。

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図3の縦軸は翼下面の斑の多少を示す(翼軸は図2と同様)。グレースケールのような数値化は難しいが、概ねカスピは白っぽくヴェガには斑が密にあるという一般傾向が見られる。他の種は両者の間にあると思われる(当然個体差はあるが)。上記のように、タイミル、ヴェガも退色が進めば白く見えるし、退色していなくても比較的淡色に見える個体もいる。しかし、ホイの分布域と想定される翼下面の斑の量との関係は、カスピ側でより少なく、タイミル―ヴェガ側でより多いと考えるのが合理的である。本件個体Aの翼下面は顕著に(場合によってカスピ以上に)白っぽい。すなわち山の左(西)側に偏っている。
これらを考慮すると、図2のaかbかは、aと考えるのが合理的と思われる(aより少し左かもしれない)。雨覆の濃さについても加味すればそれは一層確からしくなる。背の薄さはヴェガ寄り、翼下面の白さと雨覆の濃さはカスピよりといったモザイク仮説も可能だが、これはオッカムの剃刀にしたがい採用しない。
結論、個体Aは、カザフセグロカモメの背と大雨覆が比較的濃く翼下面が顕著(カスピ以上?)に白い個体、もしくはホイグリンであればタイミルよりではなくカザフよりの個体、と思われる。
ただし結論はさほど重要でない。バードウォッチングの醍醐味は識別への過程にこそあり、出た結果がすべてでは決してないから。

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カザフセグロカモメ第1回冬羽110206千葉県(改訂10320)
Possible Steppe Gull Larus (heuglini/cachinnans) barabensis first winter 110206 Japan. カザフセグロカモメ?第1回冬羽110206千葉県。 到着するやKさんが来てバラバみたいなのがいる、と告げる。水際にせわしなくしている群れへ双眼鏡を向けると探すまでもなくその個性的な白黒のカモメに視線が引き寄せられる。なるほど一見して興味深い個体。 とにかく証拠を、と望遠鏡越しに何度かシャッターを切った... ...続きを見る
鴎舞時 / OhmyTime
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ホイグリンカモメ第3回冬羽130329千葉県 カザフ−ホイグリン−タイミル・コネクション(2)
Heuglin's Gull third winter (with Vega Gull, Black-tailed Gull and Temmink's Cormorant) 130329 Japan. 体がコンパクトで背が濃く翼が長いためウミネコを思わせる特徴的な個体。頭部は白く後頸に細かい斑が点在する。背の灰色の濃さはウミネコと同程度。初列風切の黒は多くP4まではっきり見えP3にも僅かにあるようだ。初列端の白はP6から外側が小さくなっている。P10ミラ−は小さくP9にミラーはない。嘴... ...続きを見る
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2013/03/31 16:15

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