鴎舞時 / OhmyTime

アクセスカウンタ

zoom RSS セグロカモメ種群は輪状種ではない(追記130513)

<<   作成日時 : 2013/01/25 23:08   >>

ナイス ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

概念としての種 
さて、種というのがまこと不可解ななものだというのは、輪状種の存在によって明白になります。イギリスからスカンジナビア半島にかけてのヨーロッパ北西部に生息するセグロカモメLarus arugentatus は、大西洋を隔てた北アメリカに生息するセグロカモメと形態的に多少は違っているのですが、その違いが大きなものではなく、かつ変化が連続的であるので、明らかに同種(の別亜種)であり、さらに西へ進んで太平洋を横断してシベリアにいたっても、羽色がやや濃いものの相変わらずセグロカモメとみとめられるのですが、これがさらに西進して北西ヨーロッパに還ると、元のセグロカモメよりも明らかに小さくて翼の色が濃いものになってしまいます。そしてこの地域のセグロカモメと並べてみると明らかに形態的に異なり、かつ、つがい相手を決める際の配偶者選択において重要な働きを果たす眼環色(虹彩をとりまくリングの色)が異なる、などいくつかの理由により、野外で交雑することがないので、別種だと認めざるをえず、ニシセグロカモメLarus fuscus というカモメになってしまうのです。
このことが示しているのは、種は実体ではなく概念であるということです。(以下略)


兵庫県立大学教授で鳥の動物生態学者・江崎保男氏の『自然を捉えなおす』(2012)pp15-16を引用した。この文章の誤りを指摘する。

@ セグロカモメ=輪状種説で想定されたセグロカモメの分布の拡大は、上記引用文のヨーロッパ→北アメリカ→シベリア→ヨーロッパではなく、あえて記すならヨーロッパ←シベリア→北アメリカ→ヨーロッパである。Mayrの“Animal species and Evollution”(1965)によれば、カスピセグロカモメが北上、西進してニシセグロカモメとなる。一方東のセグロカモメは東進して北アメリカでarugentatusが生じ、さらに東進して最近ヨーロッパへ侵入し環が閉じる。この説の肝は、北アメリカのカモメがヨーロッパに移住したかである。上記のようなヨーロッパに発しヨーロッパに還る説はこれまで見たことがない。

A ヨーロッパ北西部に生息するセグロカモメと北アメリカに生息するセグロカモメとは別種である。形態的な違いが大きなものではない、はいいとして、遺伝子レベル(ミトコンドリアDNAのシトクロムb等のハプロタイプ)では変化は連続的ではなく、別種である。両者は30万年前に別々のレフュジアで異所的種分化により生じた。@ともかかわるが、アメリカセグロカモメがヨーロッパへ移住した遺伝的な証拠は見つからなかった。

SYSTEMATICS OF LARGE WHITE-HEADED GULLS: PATTERNS OF MITOCHONDRIAL DNA VARIATION IN WESTERN EUROPEAN TAXA
The herring gull complex is not a ring species

Bヨーロッパのセグロカモメとニシセグロカモメは少ないながらも自然交雑している(HBW、Olsenなど)。

画像
American Herring Gull nonbreeding 121228 Japan.
画像
Taimyr Gull 121228 Japan.

追記130513:
北極をぐるりと取り巻く地域に分布するカモメの中に、「勾配」を形成する仲間がいる。このカモメは個体間に銀灰色から濃い灰色まで連続的に移行する体色の変異が見られるが、隣接する個体群の間ではごくふつうに繁殖が行われている。しかし、分布域の両端に分布する個体群は違いが大きくなってしまっているので、両者の間で繁殖ができないとは言えないかもしれないが、少なくとも繁殖することはない。実際、この両端の個体群は英国で出会うのだが、別種と考えられ、銀灰色のカモメはセグロカモメ(Larus arugentatus )、色の濃い方はニシセグロカモメ(Larus fuscus )と呼ばれている。

サイエンス・ライターのコリン・タッジ著『鳥 優美と神秘、鳥類の多様な形態と習性』(2013)p91を引用した。
この記述もセグロカモメ類が輪状種であることを前提としている点で前書同様誤りである。

@ この文章からは、(イギリスの)セグロの銀灰色から(イギリスの)ニシセグロの濃い灰色までそれらを両端とした周極域で体色の「勾配」あるように受け取れるが、そのような事実はない。たとえば、ヴェガとアメリカセグロの間に「勾配」はなく断続的である。また、ニシセグロカモメは北欧の基亜種が一番濃く、その西側のイギリスの個体群はむしろ薄くなる。アメリカセグロでも西部の個体群の方が薄い。種内には西から東へ濃くなる「勾配」がある可能性がある。

A「隣接する個体群の間ではごくふつうに繁殖が行われている」事実はない。たとえばヴェガとアメリカの間に交雑はない。より近縁であるタイミルとヴェガでさえふつうには交雑していない可能性が高い。 


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
ナイス ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
セグロカモメ種群は輪状種ではない(追記130513) 鴎舞時 / OhmyTime/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる