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zoom RSS ジシギの種分化を想像する、特にチュウジシギに焦点を当てて (T)

<<   作成日時 : 2016/04/01 23:28   >>

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尾の枚数(メジャーの枚数)でジシギ類の分化をオッカムの剃刀にしたがい推測すると、すべての共通の祖先からまず初めにタシギ(14枚)が分岐し、ウィルソンタシギ(16)、オオジシギ(18)、チュウジシギ・アオシギ(20)、ハリオシギ(26)と徐々に枚数を増やしながら分化が進んだと思われる。可能性としては多(大)→少(小)の進化もありうる。ゲノムサイズは両生類より哺乳類の方が小さいし、染色体数はチンパンジーよりヒトの方が少ない。しかし進化は通常、一般から特殊へと進む。尾羽の枚数は、14と26ではどちらが一般(に近い)かと問えば、他の多くの鳥と比較すれば14の方が一般的であることはすぐわかる。
尾羽の枚数が増えるメカニズムはいかなるものか。尾羽を発生する原基の数を増やす方法としてはまず原基を配置する胚域を広げることである。たとえば原基の径が0.1mmとして、胚域幅が1.4mmから1.6mmへ拡張すれば14枚から16枚へ増やせる。たとえばイヌの趾が6本へ増える奇形は大型犬ほど頻度が高いといわれる。これは趾の原基を配列するエリアが物理的に大きくなったためと考えられる。小型犬では原基一つ分のエリアを拡張することは大型犬ほどたやすく変異できない(原基の大きさは小型犬大型犬で差がない)。もう一つの方法は原基を小さくする、あるいは分割することである。たとえば原基の径が0.1mmから0.07mmに小さくなれば、1.4mm幅に20個の原基を配置することが可能となる。
シギの尾羽についてはどちらのメカニズムが採用されているか。尾羽枚数が増えるに従い、体はオオジ≧チュウジ≧ハリオと逆に小さくなる傾向がある。したがって原基を配置する胚域が拡張したとは思えない。なので進化の過程で原基の径が小さくなったのだろう。外側尾羽がオオジ≧チュウジ≧ハリオと細くかつまたは短くなっていることを考えれば、外側の原基が分割したのかもしれない。ジシギ類は潜在的に尾羽を形成する原基サイズを小さくすることが可能な系統と考えられる。
さてジシギの系統に尾羽の枚数を増やす(または細くする)傾向があるとして、尾羽を増やし細くすることに適応的な意味はあるのだろうか。たとえば、オオジシギの尾羽の枚数は14から19までの変異があるが18枚が多数派である。チュウジシギの尾羽の枚数は18から26まで広がりがあるが20枚が多数派である。オオジが18枚であること、チュウジが20枚であることにどのような意味があるか。自然選択の結果オオジでは20枚が適応的である状況はどのようなものか。ちょっと想像しにくい。
オオジの分布域に18枚の尾羽のパターンを恐れる捕食者がいて、チュウジの分布域に20枚の尾のパターンを恐れる捕食者がいる、とすると辻褄は合う。16枚のオオジや22枚のチュウジは捕食されやすく、18枚のオオジや20枚のチュウジは尾を広げ捕食者が怯む隙に逃げ果せる。が、このような状況はあまりに非現実的だ。
中立的な変異が偶然固定した、と考えることも可能かもしれない。たとえば現在の分布域に最初に移住したオオジの個体群にたまたま18枚が多くいた、そしてその子孫が増えた、と考えることは可能である。ありうるがあまり面白くない。
雄のクジャクの上尾筒のゴージャスな飾りは自然選択で不利になる。目立つ上に捕食者から逃げるのに差し障るからである。ダーウィンを悩ませた難問であった。しかし、そのコストを上回る利益があれば進化しうる、と天才は気付く。性選択である。派手な飾り羽は敵の目にも留まりやすいが、それ以上に配偶者を惹きつける役割があったのだ。雌は広げられた雄の飾り羽を読むことで配偶者をチョイスする。147個よりも150個の目玉模様を持つ雄を選ぶ。にわかには信じられないが一瞥で見分ける。ヒトの祖先では雄の選好みが雌のプロポーションや毛のない体を進化させたとする説がある。しかし、動物の配偶行動では普通雌が雄の形質を選好みする。
ということで、ジシギ類の分化にも性選択が関わっているはずである。たとえばオオジの雌は14枚や20枚より18枚を選好みする。チュウジの雌は18枚や22枚より20枚を好むと考える。雌のクジャクが雄の上尾筒の目玉の数を、それも150もの数を瞬時に数える、というか認識するのだから、ジシギの雌の眼にも雄の尾羽の18と20との差の判別など造作もないことだろう。しかし実際フィールドで雌が数えるのは眼で、ではなく、耳でだろう。雄はディスプレーフライトで尾羽、特に外側尾羽を使用する。下降時に発生する「ゴゴゴゴゴ」に関わる。種特異的なパターンはソナグラムで表すことができる。おそらくオオジ雌は18枚によるゴゴゴを好み、チュウジの雌は20枚のゴゴゴを好むはずだ(もちろん私はチュウジのディスプレイフライトは見たことも聞いたこともないが)。
長かったがここまでは前置きである。
そろそろ本題に入る。

2015年度日本鳥類標識協会札幌大会で注目すべき発表があった。小田谷嘉弥さんの「尾羽が18枚の“小さいオオジシギ”とは何者か?」だ。この報告には面白いポイントがいくつもあるのだがここでまず取り上げたいのが関東のチュウジの尾羽の枚数の度数分布である。20枚が多数派で52個体。これはよしとして、意外なのは18枚が23個体もいたことである。さらに意外なのが22枚あるいはそれ以上がまったく捕れなかったことである。小田谷さんは意味深長に、性による変異と地理的な変異の両面から、チュウジシギの個体変異が解明されることが期待される、と報告を締め括った。彼は研究者なので科学的な根拠、客観的なデータで示せないことには慎重にならざるを得ない。
一方私はただのバードウォッチャーなのでいかなる仮説を立てて反証されて恥をかいても食いっぱぐれることは無い。
まずはチュウジシギの尾の性的二型の可能性について妄想してみよう。
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ジシギの種分化を想像する、特にチュウジシギに焦点を当てて (U)
承前 2015年度日本鳥類標識協会札幌大会で注目すべき発表があった。小田谷嘉弥さんの「尾羽が18枚の“小さいオオジシギ”とは何者か?」だ。この報告には面白いポイントがいくつもあるのだがここでまず取り上げたいのが関東のチュウジの尾羽の枚数の度数分布である。20枚が多数派で52個体。これはよしとして、意外なのは18枚が23個体もいたことである。 貼り付け元 ...続きを見る
鴎舞時 / OhmyTime
2016/08/16 21:31
ハリオシギ幼羽150913千葉県(改訂160102/二訂160103/三訂160201)
Pin-tailed Snipe juvenile 150913 Japan. 日時天候: 発見したのは2015年9月13日17時15分。この日の日の入りは17時51分で辺りは薄暗くなり始めていたが、発見直後に西の空の雲間から西日が二番穂の間隙に差込んだ。この日の天候は午前中は日が出ていたが、次第に雲が空を蔽い、午後の日照時間は夕方の3分であった。 東海地方に上陸した台風18号の影響で千葉県は9月10日は100ミリ以上の大雨が降り南東の強い風が吹いた。この個体が当地に舞い降り滞在したの... ...続きを見る
鴎舞時 / OhmyTime
2016/09/18 10:53
ジシギの種分化を想像する、特にチュウジシギに焦点を当てて (V)
承前 これまでのジシギ類の尾羽の考察についておさらいする。 ジシギ類は種分化の過程で尾羽の枚数を段階的に増やした。 雄の尾羽の枚数(と形態)はディスプレイの尾音を決める(影響を与える)。 雌は尾音を聞き分け雄を選ぶ。 雄の尾羽の枚数(と形態)は雌の選好性が決める。 雄の尾羽の枚数に変異が生じても雌は適切な枚数の雄をチョイスする(安定化選択)。 雑種の雄は両種の雌に好まれず適応度は低くなる(生殖隔離の強化)。 雌の尾羽は性選択の対象にならないためコストを低減する方向に変異する... ...続きを見る
鴎舞時 / OhmyTime
2017/08/20 14:04

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