鴎舞時 / OhmyTime

アクセスカウンタ

zoom RSS メジロガモの種分化・大形カモメの種分化(追記180408)

<<   作成日時 : 2018/04/07 23:53   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像
画像
Ferruginous Duck breeding ♂ 180228 Japan.
 メジロガモAythya nytoc の近縁種といえば、同様に目の白い同属スズガモ属のアカハジロA.baeri である。ユーラシア大陸に広く分布していたであろう両種の共通の祖先は、氷期に大陸の東西に分断、隔離された。西側レフュージアでメジロガモが、東側レフュージアでアカハジロが分化する。間氷期の温暖化に伴い分布域が拡大する。メジロガモは東進し、アカハジロの分布域に侵入し、両種の二次的接触が起こる。隔離の期間が十分長く種分化が進んでいれば交雑は起こらない。しかし、メジロガモとアカハジロは分化が不完全だったため交雑が起こった。個体数の減少が顕著なアカハジロにとって、メジロガモとの交雑は種の絶滅に関わる問題である。
一方で世界に目を転じてみれば、アカハジロよりさらに近縁と思われる二種がある。オーストラリアのオーストラリアメジロガモA.australis 、そしてマダガスカルの希少種マダガスカルメジロガモA.innotata である。両者とも外見はメジロガモにそっくりである。なのでメジロガモとアカハジロの共通の祖先からアカハジロが分化した後に、南半球の二種が分化したと思われる。メジロガモとアカハジロの種分化は分断で説明可能だが、メジロガモ、マダガスカル、オーストラリアの種分化は如何に説明できるだろうか。大形カモメの種分化を参考にしてみる。

Liebersらによれば、大形カモメの分化と現在の分布は、
@ allopatric fragmentation 異所的な分断、
A isolation by distance 距離による隔離、
B contiguous range expansion 隣接地への分布拡大、
C long-distance colonization 長距離移住、
で説明ができる。

@異所的な分断の例としては、まず、大型カモメ類は大西洋レフュージアとアラル・カスピ海レフュージアに分断され、それぞれからatlantis などを含むクレードTとcachinnans などを含むクレードUが分化することが挙げられる。vegaeschistisagus からmongolicus の種分化もこの例として挙げられる。

Aセグロカモメ種群は北極を巡る輪状種であるとするエルンスト・マイアの仮説では、距離による隔離は最も重要な種分化要因であった。しかし、現在ではカモメ類の種分化には距離による隔離の作用は限定的で、atlantis からmichahellis への分化などの要因として考えられている。

B隣接地への分布拡大に伴って種分化が進んだ例としては、heuglinifuscuc heuglini vegae vegaesmithsonianus 等挙げることができる。隣接地への分布拡大は大形カモメ類の種分化で重要な要因とされる。

C長距離移住は移動能力の高い鳥類や散布能力の高い植物、海流で移動する生物などで見られる。atlantisarmenicus 、ニシセグロカモメfuscus →ミナミオオセグロカモメdominicanusの種分化が長距離移住で起こったと考えられている。

さて、メジロガモの種分化に戻る。メジロガモとアカハジロの共通の祖先からメジロガモとアカハジロが種分化した要因は冒頭で記したように@異所的な分断と思われる。その後起きたと思われるオーストラリア、またはマダガスカルの分化は如何に起こったか。両者とも南半球かつ海を隔てているので、C長距離移住により分化したと考えるのが妥当だろう。
それでは長距離移住が起こるにはどのような過程が考えれれるか。黒潮に乗り伊良湖岬へ漂着したヤシの実を柳田國男が見つけ、藤村が「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ」と詩にした。こうした海流による分散は、生物の分布の説明理論として実は万能である。
たとえば大洪水や大津波で陸上の生物が大量に海上に運ばれる。多くの生物は水没するも、水面に浮かぶ大木等はノアの箱舟ならぬ便利な筏、ラフトと化し動植物を異国の地へ渡す。大形の動物でも、子供や卵なら輸送可能だろう。アフリカ大陸から原猿をマダガスカルへ送り込んだのも大きなラフトで説明可能とされる。ラフトと漂流で南米のイグアナの太平洋への分散も説明できる。説明の難しい生物の分布にこうした分散の理論を安易に適用するのは史実の解明を妨げることになりかねない。
その点、鳥は飛行能力が高く、漂流に頼る必要がない。しかしただ飛べばすむというわけではない。繁殖地を北半球ユーラシア中緯度から大海を隔てた南半球のオーストラリアやマダガスカルへ移すにはどのような過程が必要か。
繁殖期にこの遠距離を個体群が移動することは常識的に考えてあり得ない。可能性が高いのは、越冬地をそのまま繁殖地にしてしまうことである。何らかの理由で渡りを止めさえすればよい。
メジロガモの現在の越冬地、たとえば東南アジア、インドやアフリカ大陸の個体が渡りの通常コースをはずれオーストラリアやマダガスカルを繁殖の地として選んだ。この説はさらに元の越冬地に戻らなくする過程も要求され、越冬地=繁殖地説より、イベント数が多くなる。

カモメの種分化に戻る。ミトコンドリアDNAのハプロタイプネットワークで、ミナミオオセグロカモメで多くみられるハプロタイプグループG2がニシセグロカモメに多く見られるハプロタイプグループG1から派生していたことはちょっとした驚きであった。足が黄色い、背が濃い、幼羽のパターンが似ているなど確かに共通点はあるのだが、大きさ、体形や嘴の大きさ等全体的な特徴に比較的大きな隔たりがあり、かつ、なにより繁殖地がかけ離れていたからである。
ニシセグロカモメ(前)とミナミオオセグロカモメ(後)のサイズの差異を確認する。全長は、51-61cm: 54-65cm、質量(雄)は、550-1200g: 900-1335gであり、ミナミオオセグロカモメに大型化が生じていることがわかる。こうしたサイズの変化は両種の生態の違いで説明できる。ニシセグロカモメは北極海沿岸で繁殖し、地中海からアフリカで越冬する。長距離移動をするニシセグロカモメに対し、ミナミオオセグロカモメは非繁殖期も繁殖地周辺で過ごす。長距離の移動はしない。
メジロガモの種分化を再度考察してみる。ニシセグロカモメ→ミナミオオセグロカモメと同様な過程で、メジロガモ→オーストラリアメジロガモの種分化が起きたと仮定すると、同様な形態の変化が予想される。そこで、メジロガモ(前):オーストラリアメジロガモ(後)のサイズを確認する。全長は、38-42cm: 42-59cm、雄の質量は、470-730g: 525-1100gで、明らかに大型化していることがわかる。さらに、翼開長は、63-67cm: 65-70pであり、翼開長/全長(それぞれ中央値)は、1.6: 1.3と翼がはっきり短くなっていることがわかる。近縁種では一般的に、長距離移動をする種ほど相対的に翼が長くなり、身軽になる傾向がある。
詳しい測定値は不明だが、マダガスカルでも同様な現象が見られるようだ。南半球のメジロガモ類は、ミナミオオセグロカモメ同様非繁殖期の長距離の移動は通常しない。やはりメジロガモ→オーストラリアメジロガモの種分化はニシセグロカモメ→ミナミオオセグロカモメ同様長距離移住で起こったと考えられる。

大型化と移動性低下はどのような因果関係か。長距離の渡りを止めた結果、翼が短くなり体が大きくなったとするのがわかりやすい。逆に、大型化が先に起こり結果渡りを止めたと考えることもできる。化石やゲノムを調べればいずれ分かるかも。
最近ミトコンドリアDNAの分子系統学的研究で150種のカモの系統が明らかになった。
それによると、カモ類の多様化はまず5800-5000万年前、始新世に起こった。そして530万年前以降、更新世〜鮮新世に著しい多様化が起こった。スズガモ属の種分化は500万年前以後に起こる。まず、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモの共通の祖先とメジロガモ類が分化する。メジロガモとオーストラリアメジロガモが分化するのは、キンクロハジロとスズガモが分化した後、スズガモとコスズガモが分化する前である。残念なことに、アカハジロとマダガスカルメジロガモのデータが無い。この2種を含めた、ミトコンドリアDNA、さらに核DNAの分析でスズガモ属の種分化の過程の詳細が判明することを期待したい。

数値や分布はHBW AliveまたはHBWを参考にした。

追記180408: スズガモ属の分岐が500万年前であるのに対して、セグロカモメ種群の2クレードの分岐が30万年である。スズガモ属内でも分岐の深いメジロガモとホシハジロとの間で未だに交雑が起こっていることを考えると、例えば、シロカモメとホイグリンカモメの雑種ができるのは当たり前のような気がする。一方で、セグロカモメとオオセグロカモメの雑種の少なさや、カナダカモメとアメリカセグロカモメの交雑例がないことなどは驚くべきことである。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
メジロガモの種分化・大形カモメの種分化(追記180408) 鴎舞時 / OhmyTime/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる