Larus heuglini 'taimyrensis'(「タイミレンシス」)とは

ここで採り上げる脚の黄色っぽいセグロカモメは、このブログでは、以前にも書きましたが、Larus heuglini 'taimyrensis'(「タイミレンシス」)とします。ホイグリンカモメの亜種とされる場合もありますが、' 'はホイグリンカモメとセグロカモメ(L.vegae)との交雑個体であることを含意しています。http://seichoudoku.at.webry.info/200605/article_2.html
  セグロとホイグリンとの間にはグラデーションが存在していて、交雑は頻繁にあり、交雑個体も繁殖可能で適応度の低下もあまりないのかもしれません。これが事実であるなら、今日の生物学で主流の種の定義である、生物学的種概念にしたがえば、両者は同種と判断されます。
  ホイグリンとセグロは、フィールドでははっきり識別可能ですが、そうしたヒトの認知の問題と生物の種は無関係とまでは言い切れはしませんが、一対一の関係にあるわけでは決してありません。識別可能であることは生物の類縁関係や系統と直接関係しているわけではありません。回りくどい言い方になってしまいましたが、早い話、違いがわかっても別種の根拠にはならないということです。ヒトの持つ識別能力と種の関係については、いずれさらに考察するときがくると思います。

 このブログで、ある個体を「タイミレンシス」と判断するポイントを以下に示しますが、すべての条件が常に揃うわけではありません。
1)脚が黄色いか黄色味がある。
2)背の灰色の濃さは、セグロカモメと同じかやや濃い程度。
3)初列風切の換羽がセグロより遅い。
4)Larus heuglini heuglini (ホイグリンカモメ)ほど体に対して翼が長くなく、それにともないセグロのようなややぼてっとした体形に見える。
5)嘴の赤がセグロより大きい傾向があり、上嘴に達することがある。

 この日は、セグロカモメ264羽にたいして、「タイミレンシス」は12羽で約4パーセントです。典型的なホイグリンカモメはいませんでした。

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Larus heuglini 'taimyrensis' breeding 061031 Japan.
脚は黄色味ががったピンク。初列風切P7-10は旧羽。P6,7は脱落しています(もしく伸長中)。セグロの多くは新羽のP6が見えていました(P8まで新羽の個体もいました)。背の灰はセグロと同程度。虹彩は黄色。

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L. h. 'taimyrensis' molting adult 061031 Japan.
左はセグロ、右が「タイミレンシス」。脚は上の個体よりは黄色味があります。初列風切P7-10は旧羽。背の灰はセグロと同程度。虹彩は黒。セグロに比べ、胴体部が横長に見え、脚が短く見えます。

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L. h. 'taimyrensis' breeding 061031 Japan.
脚は橙黄色。初列風切P7-10は旧羽。背の灰はセグロと同程度。虹彩は中間色。

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L. h. 'taimyrensis' breeding 061031 Japan.
上の個体に似ていますが、体形はややホイグリン的です。

分類学の今泉吉典は『分類から進化論へ』で、ノンプロの観察者の主観による分類を、リンネ式分類を根底から崩壊させるおそれがあると、警告しています。傾聴に値する意見かもしれませんが、しかし、このブログでは必要に応じて分類について言及していくことになると思います。なぜなら、分類について考えを巡らせることが楽しいことだからです(あたりまえですがこのブログ管理人は分類の専門家ではありません)。また、リンネ式分類を根底から解体しようとする生物学者の運動もあります。それについても触れるときがあるかもしれません。

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この記事へのコメント

  • matsumaru

    「種」ってなんだろう、種と種の間って隔絶が必ずあるという先入観を持ちすぎなのカモ、って"カモ"メ類や"マルガモ"(マガモ×カルガモ)などの交雑カモは、ヒトに問いかけているのカモしれないですね(笑)
    チワワとセントバーナードは同種ですよね(笑)
    2006年10月31日 23:32
  • seichoudoku

    チワワとセントバーナードなどイヌの品種は、亜種に相当します。チワワより少し大きい品種とチワワは繁殖可能で、チワワより少し大きい品種とさらに大きい品種は繁殖可能で、と繰り返してゆくといずれセントバーナードにつながります。だから同一種と考えられます。2種が、しかし、野に放たれたのなら生殖的隔離(セントバーナード♂とチワワ♀では交尾不可能)されているので、別種と判断せざるを得ないと思います。
    2006年10月31日 23:44

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