想像を超えて、両者が系統的に手をつないだ。
カイツブリの分類: 古くから形態の類似からアビと近縁とられてきた。図鑑でも大概アビの次がカイツブリの定位置である。1935年、ストルペは両者の形質は収斂によると考えた。同様の生態が同様の形態に進化させた。イルカとサメのように。
ところが、1980年代の分岐学(系統学)の標準的教科書のひとつ『系統発生パターンと進化プロセス』をエルドリッジと著した鳥類学の大御所クレイクラフトが、アビ、カイツブリ姉妹群をリヴァイヴァル。
これも、シブリー&アールキストのDNA-DNAハイブリザイゼーション法によって屠られた。彼らは、カイツブリと近縁の現生鳥類はない、とした。これで決着したと思われた。
フラミンゴの分類: 19世紀、T.ハクスリーはカモ、コウノトリ、サギの中間に位置するとしてそれらに入れず独立させた。嘴、足、鳴声、水に浮いての逆立ち採食などからカモ目に入れる説も出たが、進化学の大家マイヤらは、やはり独立の目を主張した。そして分岐学のクレイクラフトは、コウノトリ目を、『鳥の起源と進化』のフェドゥーシアはセイタカシギ科との類似を重視してチドリ目からの派生を主張する。シブリーらはチドリ、タカ、アビ、カイツブリなどと共にコウノトリ目に入れた(カイツブリと近縁の現生鳥類はない、といっておきながら)。
フラミンゴ=長脚のカイツブリ: 2008年6月サイエンスに掲載されたキンブルらの論文によれば、なんと、フラミンゴはカイツブリと姉妹群で、さらに驚くことに、ハト、クイナモドキ、サケイ、ネッタイチョウと単系統(共通の祖先を持つ)をなす。
これまでフラミンゴとカイツブリの類縁を指摘した鳥類学者を知らない。これは分類学、というかヒトの認識は、急速に放散した鳥類の系統を解くには無力である、ということだと思う。熟練のバーダーは約10000種の鳥を識別できるかもしれない。それにもかかわらず、カイツブリとフラミンゴの近縁を分類学者は認識できなかった。
形態の微妙な差異を認識できることは、鳥類の系統学にはたぶんほとんど役に立たない。けれど、そういわれてみれば、みずかきがあったり、泳ぐフラミンゴが化石で見つかっていたり、と、近縁を導くヒントはいろいろ出てくるのだと思う。
カイツブリの雛080731千葉県。
→カッコウ類はコンパクトなツルである!
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