亜種アカアシアジサシには2つのタイプがある

「アカアシアジサシ」と呼ばれているアジサシには2つのタイプがある、と書いてある本はない。一方で、「アカアシアジサシ」の特徴が図鑑によって違う。山渓『日本の野鳥』では、「胸から腹がかなり濃い灰色」だし、たとえば『日本の野鳥590』では、「背や翼上面は淡く、体下面は白い」。逆だ。どちらかが間違っていることになる。それはただし、「アカアシアジサシ」が一つの場合だ。
けれど、「アカアシアジサシ」と呼ばれているアジサシに少なくとも2つのタイプがあるとするなら、どちらも間違ってはいないことになる。実際フィールドでアジサシを見ていると、「アカアシアジサシ」には2つのタイプがあるのだ。

1) 薄いアカアシアジサシ: 体形は亜種アジサシに近い。足は赤く、短くない。嘴は赤く(先は黒)、やはり短くない。背の灰色はアジサシよりやや薄いか同じくらい。下面は白。『日本の野鳥550』『日本の野鳥』の「アカアシアジサシ」はこっち。
2) 濃いアカアシアジサシ: 足は赤く、アジサシより短い。嘴は赤く(先は黒)、アジサシよりやや短い。体上面、下面ともアジサシより濃く、下面は藤色っぽく見えることがある。山渓はこっち。こっちのタイプは以前からキョクアジサシと間違われることがある。最近のブログでもこうした誤認が見受けられる。

さてここから先は本ブログの管理人の仮説である。誰か確かめてほしい。
まず、薄いアカアシアジサシは中央アジア~モンゴルに分布する亜種アカアシアジサシSterna hirundo minussensis と思われる。HBWでは、この亜種はヨーロッパ~北アメリカに分布する基亜種S.h.hirundoと日本で普通に観察される亜種アジサシS.h.longipennisとのインターグレード(亜種間の交雑個体)とされる。
そして、濃いアカアシアジサシだが、これは別の亜種かもしれない。候補はS.h.tibetanaという亜種である。モンゴル、カシミール、チベットの高地に分布し、HBWによると、上面、下面がやや暗色で、嘴が短い。足の色や長さの記述は残念ながらない。越冬地はインド洋の東側だが、距離と飛行能力からして、日本に迷行する可能性はあると思う。
実はもう一つの可能性がある。アカアシアジサシはやはり一つ、としても矛盾なく説明が可能なのだ。薄いアカアシは春の渡りに見られる。そして、濃いアカアシは夏に見られる。季節で色が変化すると考える。羽毛が擦り切れて濃くなるのはありえる。ただし嘴と足については説明は難しい。

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濃いアカアシアジサシ090723。嘴と足は短く見える。
このタイプはしばしばキョクアジサシと誤認される。頭はキョクのように丸くない。

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濃いアカアシアジサシ010715茨城県。8年前のこの個体もやはりキョクアジサシと誤認された。体は濃く、足は短い。

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薄いアカアシアジサシ030524茨城県。




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この記事へのコメント

  • にしむら

    こんにちは。
    23日のArcticはいいですね。

    アカアシアジサシに関してはぼくも以前よりアジサシより濃いのか薄いのか?がつねずね疑問でした。
    古い記憶なので確かではないのですが晩夏に薄いタイプをたくさん見たような気がするのでseichoudokuさんの2つのタイプがいるとする仮説はかなり説得力があるように思えます。
    2009年07月25日 21:02
  • seichoudoku

    にしむらさん、貴重なコメントありがとうございます。
    第2回(?)を見るのは私は初めてなのでいい経験でした。

    濃いアカアシアジサシは一見してアジサシとは別種ではないかと思えます。個体差の範疇を超えているというのが直感ですね。薄いのが夏にたくさんいたとなると、磨耗による暗化仮説は否定できるかな?
    これからもよろしくお願いします。
    2009年07月25日 21:23

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