亜種カラフトハマシギではない第1回冬羽101230茨城県追記110125・110203・110210

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Colour-flagged Dunlin first winter 101230 Japan.
亜種カラフトハマシギ第1回冬羽101230茨城県。2010年12月30日15時13分、霞ヶ浦周辺の蓮田で採食中のハマシギ約110羽の群れに、左跗蹠金属リング、右脛黄色フラッグ/右跗蹠白色フラッグの付けられたハマシギを観察した。この標識個体は、前方の肩羽と三列風切の一部に黄褐色味を帯びた幼羽、雨覆に羽縁が白く磨耗した幼羽が見えるので第1回冬羽と思われる。ハマシギは♀の方が♂より大きく、嘴が長いが、この個体の性は不明。
このハマシギはサハリンでバンディング、放鳥された亜種カラフトハマシギCalidris alpina actites と思われる。であれば、本亜種の日本での初確認となる。繁殖地以外での確認は世界で初か?
これまで標識調査により日本で確認されたハマシギの亜種はアラスカ北部産のC.a.arcticolaのみである。分布から推測して日本で見られる可能性のあるハマシギの亜種は次にあげる6亜種である。

Ⅰ. C.a.centralis : 北東シベリア~コリマ川で繁殖し、インド~中国南西部で越冬する。さらに西に分布する基亜種C.a.alpinaと大きな差はなく、HBWでは、C.a.alpinaに含まれることが示唆されたとある。
Ⅱ. C.s.sakhalina (亜種ハマシギ): コリマ川~チュコト半島で繁殖し、中国で越冬することが確認されている。HaymanらのShorebirds、HBW、日本鳥類目録などの文献で、この亜種が日本で越冬するとされており、最近出版された、BrazilのBirds of East Asiaでも、アジア東部で見られるほとんどのハマシギが本亜種とされているが、日本で確認はされていない。
Ⅲ. C.a.kistchinski : コリマ丘陵~カムチャツカ半島、千島列島北部で繁殖し、越冬地は不明。2008年4月28日~5月20日、大阪で本亜種の可能性のある個体が観察された。→SHORE BIRDS IN JAPAN
Ⅳ. C.a.actites (亜種カラフトハマシギ): サハリン北東部で繁殖する。越冬地は不明。ここで扱った亜種では最小。今回初めて撮影された。
Ⅴ. C.a.arcticola : アラスカ北部~カナダ北西部で繁殖し、中国東部、韓国、日本で越冬する。たとえば、→SHORE BIRDS IN JAPAN
Ⅵ. C.a.pacifica (亜種オオハマシギ): アラスカ南西部で繁殖し、北アメリカ太平洋岸で越冬する。千島列島でも見られるらしい(『日本の野鳥590』)。亜種中最大で、嘴が長い。

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Dunlin adult nonbreeding 101230 Japan.
ハマシギ成鳥冬羽101230茨城県。一緒にいた標識のないハマシギの亜種は不明。雨覆は冬羽に換羽している。

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Dunlin first winter 101230 Japan.
ハマシギ第1回冬羽101230茨城県。標識のない第1回。雨覆は幼羽。外側大雨覆にサブターミナルバンドが少し見える。上の個体との差がよくわかる。

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Dunlins 101230 Japan.
ハマシギの群れ101230茨城県。蓮田で採食。大きさや嘴の長さ、色味など、標識個体と他の個体との差は特に見られなかった。同じ亜種かもしれないし、複数が混在しているかもしれない。亜種カラフトハマシギはロシアで絶滅危惧亜種とされ、個体数は900に満たないとされる(茂田Birder 2005年1月号p69)。この群れがすべて亜種カラフトハマシギであるとすれば、全個体数の数割がこの地に集結していることになり、日本が重要な越冬地である可能性がある。

追記110125:
亜種間の冬羽の識別は今のところ不可能だが、冬羽への換羽の時期がヒントになる可能性はある。亜種により初列風切の換羽開始の時期が異なるからである。

追記110203:
下記のはしもさんのコメントによれば、残念ながら本個体は亜種カラフトハマシギではないことになる。そのため、本エントリのタイトルを変更した。

追記110210:
 山階の広居忠量氏によれば、黄色フラッグの端が切れていることから、エトロフ放鳥の可能性が高い。

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この記事へのコメント

  • はしも

    フラッグから、おっしゃられるように、C.a.actites
    のようですね!ハマシギの亜種は私も非常に興味があり注意して観察しているのですが、冬羽では亜種の野外識別は
    厳しいですね。やはりフラッグの力は絶大ですね。
    これでしっかりどの亜種かわかりますね。

    素晴らしい観察、撮影ですね!
    2011年01月24日 23:37
  • seichoudoku

    はしもさん、コメントありがとうございます。
    記録という面では喜ばしい事ですが、標識でしか識別できないのであればちょっと残念でもあります。夏羽の色や模様の違いは性選択やグロージャーの規則などで説明できます。越冬地では越冬地なりの選択圧があるわけで、亜種間の冬羽の差異もどこかしらあるのではないかと思っています。フィールドでは識別不能、はバードウォッチャーにとって禁句ですから。
    2011年01月25日 20:49
  • はしも

    C.a.actitesに関してはどこで越冬しているのかすら
    わかっていなかったので、日本に渡来しているということが標識で確実にわかれば、冬羽での亜種の識別もこのような個体などからも、野外識別の非常に大きな参考になります。
    私も冬羽でも違いがないかと日頃から観察しています。現状冬羽のハマシギの亜種の野外識別は厳しくても、こういった観察なども通じて識別は発展すると思っています。
    今後の観察の積み重ねにかかっていると思っています。
    2011年01月26日 00:44
  • seichoudoku

    またまたコメントありがとうございます。励みになります。はしもさんのシギチ観察に対する志の高さは全国のバードウォッチャーにインパクトを与え続けています。私もあやかりたい。
    2011年01月26日 20:36
  • はしも

    先日はブログにコメントいただきまして本当にありがとうございました。

    ところで、実は大阪でも同じフラッグの色のハマシギが観察されまして、ロシアの研究者に聞いてみたところ、近年はロシアのチームがサハリン北東部のOdoptu gulf というところでバンディングされているらしく、2010年は10月にバンディングしたそうで、渡り途中の個体なので
    actitesではないとのことでした。

    繁殖地の雛にバンデイングしていれば確実なのですが、近年繁殖地にもはいっていないそうです。

    山階の方にもにも確認しましたが、同様のお答えでした。

    バードウォッチャーにもわかるようにもっと広く情報を公開してもらえれば協力者も増えると思うのですが、国内外情報網の整備が必要ですね。
    2011年02月02日 22:37
  • seichoudoku

    貴重なコメントに感謝いたします。
    この標識ハマシギを観察してすぐに(昨年)、山階に連絡しました。レスにはサハリンの放鳥と思われるが亜種は判定できないとありました。
    サハリンでバンディングされているのになぜactitesと断定できないのか妙な気がしたのですが、やっと腑に落ちました。はしもさんの行動力には感服します。
    ところで、別の亜種に同じ標識付けられたのでは、標識による亜種の判定はできなくなりますね。なぜ、標識を変えなかったのでしょう。
    2011年02月03日 20:44

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