扁形動物の系統、オオミスジコウガイビル110702千葉県(改訂110708)

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オオミスジコウガイビル110702千葉県。キビタキの囀る雨上がりの林に見つける。数十センチの大きな個体に寄り添うように小さいのがいた。
『動物たちの地球63』(朝日新聞社1992)によると、1968年夏に皇居で見つかり話題となる。1982年に新種として記載される。東南アジアからの移入種と考えられる。

コウガイビルはプラナリアなどとともに、扁形動物門、渦虫綱の三岐腸類(ウズムシ目)に分類される。扁形動物の分類は、分子系統学的研究によって劇的に変わった。

『岩波生物学辞典第4版』(1997)では、扁形動物門は次の4綱からなる。
Ⅰ.渦虫綱 : 小鎖状類、皮中神経類、無腸類、三岐腸類、・・・・・〔付〕珍渦虫類
Ⅱ.単生綱
Ⅲ.吸虫綱
Ⅳ.条虫綱

分子系統解析により、従来の扁形動物に次の3系統が見いだされた。
① 無腸型類  : 渦虫綱皮中神経類+渦虫綱無腸類
② 小鎖状類  : 渦虫綱小鎖状類
③ 有棒状体類 : 小鎖状類、皮中神経類、無腸類を除く渦虫綱 + 単生綱 + 吸虫綱 + 条虫綱
このうち姉妹群となる②小鎖状類と③有棒状体類のみを扁形動物とするのが一般的になった。

①無腸型類の系統樹における位置は紆余曲折があったが、最近、珍渦虫類と近縁の新口動物と判明した。腸も肛門も原腎管も体腔もない一見原始的で単純な動物が、扁形動物よりむしろ脊椎動物に近縁だったとは!見た目で系統はわからない。

無腸類は発見以来長く扁形動物に分類されていたのだが、分子系統学的研究で左右相称動物中最初に分岐した動物、すなわち扁形動物よりずっと古いタイプの動物とされた。しかしこの説は正しくなかった。進化速度が異なる複数の系統を比較すると近縁でないもの同士を誤って近縁としてしまうことがある。最大節約法によって系統樹を求めるさいに生じるLBA(ロング・ブランチ・アトラクション)と呼ばれるアーティファクトだったのだ。今年2月、筑波大の中野裕昭らは、複数の方法で、無腸類が新口動物(の4つ目の門)であることを突き止めた。

珍渦虫類は1949年に記載されて以降やはり扁形動物に分類されていた。しかし、ギボシムシと表皮が似ていること、平衡胞がある種のナマコと共通であることより、半索動物、棘皮動物に近いという説が出る。しかし、ミトコンドリアDNAの分子系統ではなんと、二枚貝に近縁とされた。幼生が二枚貝に近いこともあり、珍渦虫は退化した貝と考えられるようになる。その後の研究で、そのmtDNAが捕食された貝からのコンタミであることが判明。上記の中野裕昭らの同じ論文で、珍渦虫は無腸類に近縁で新口動物であることが示された。

これらの混乱のもとはいずれも技術的な問題だ。こうした問題は解決されつつあり、分子系統はさらに強力な科学的ツールとなるだろう。

http://www.nature.com/nature/journal/v444/n7115/full/nature05241.html
http://www.sciencedaily.com/releases/2009/09/090923112543.htm
http://www.nature.com/news/2011/110209/full/470161a/box/1.html
http://www.nature.com/nature/journal/v470/n7333/full/nature09676.html

追加150709:
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オオミスジコウガイビル150628千葉県。
同所で。




  

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