カスピセグロカモメ?第2回冬羽111231千葉県(改訂120115)(追加120203)

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Possible Caspian Gull second winter with Vega Gulls 111231 Japan.
この個体の、白い頭、先が白く基部に少しピンクが入った黒い嘴、濃い大雨覆、尾からの突出の大きい翼、長い足(脛)、黒帯の狭い尾などの特徴は、カスピセグロカモメ第2回として矛盾は無い。一方で、長くない嘴、やや急なスロープの額はカスピとしてはどうだろう。典型的な♂とは異なるが、図鑑やネットの画像を見る限り逸脱しているとはいえない(♀の嘴は♂より1割短い。また、♀の頭部は洋ナシ形とされる(Garner))。
この個体をカスピとする一番の問題点は、セグロカモメのような、頸から腹にかけての拡散した(シャープでない)灰褐色の濃い斑である。ネット上の画像では、後頸の斑は見られても、腹まで広がった個体は見当たらなかった。若い個体はL.argentatusより例外が多いとされる(Garner)ので、このような個体がいるかもしれない。

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Larus heuglini 'taimyrensis' second winter 111211 Japan.足は長く見えない。小中雨覆は上記のカモメほど暗色ではない。

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L. h. 'taimyrensis' second winter 120104 Japan.件の個体と比べて、頭部の斑はやや多く、足は長くなくスマートさに欠ける。嘴のパターンや暗色の大雨覆は似ている。

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Vega Gulls second winter 120104 Japan.ずんぐりしている。頭部から腹まで褐色斑がある。大雨覆は白がかなり入っている。

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Vega Gull second winter 120107 Japan.やはりずんぐりした体形。嘴がツートーンになっている。

カスピセグロカモメには次のような顕著な特徴がある(Olsen2003)。
1)小さい頭、2)痩せた身体、3)長い足、4)長い頸、5)長く平行で先が下がった嘴、6)長いスロープ状の額、7)上方かつ前方にあるビーズ状の小さい目、8)突き出た胸、9)平らな背、10)黄色味を帯びた灰色、または肌色の足。
計測値でセグロカモメと比較すると、翼長、跗蹠、嘴峰はほぼ等しい。一方、嘴の太さと体重はカスピが小さい。したがって、嘴が長く見えるのは、頭部が小さく嘴が細いことによる、足が長く見えるのは体部がスリムであることで脛が露出していることによる、翼が長く見えるもの体部のボリュームがないことによる、と考えられる。
性的二型は明確で、頭部のジズは、♂ではオオズグロ、♀ではハシボソカモメ(Olsen)またはカリフォルニアカモメ(Garner1997)に近いとされる。

カモメ本の古典グラントのGullsでは、セグロカモメ(vegae)などとともにLarus argentatus の亜種とされている。
HBWでは、西フランスでargentatusと同所的に分布するのに隔離が成立しているため独立した種Yellow-legged Gull (キアシセグロカモメ)L.cachinnansとされ、基亜種、atlantis、michahellis、barabensis、mongolicusの5亜種から成る。cachinnansの西部個体群'ponticus'は基亜種のシノニムとされた。
'ponticus'は黒海北部に分布し、背が淡色で、P10の先は、サブターミナルバンドがなく長いホワイトチップになっている。さらにP10の内弁に長いホワイトタン(白舌)がみられる(Garner)。これらの形質は東に向けてクラインとなっており(したがってたとえ特徴が顕著であっても'ponticus'は亜種とはいえない)、東部個体群では、背は濃くなり、P10にはセグロカモメのようなミラーが見られ、長い舌は目立たなくなるという(Olsen、Garner)。ホワイトタンの'ponticus'の初列の黒はP5まで、ホワイトタンのない東部個体群ではP4まである(Garner)とされる一方で、前者は老成した♂の特徴で、後者は亜成鳥または♀の特徴ともされる(HBI)。日本で観察されるカスピは、近い東部個体群の方が可能性は高いだろうから(東進するとすれば)、P10の長い白端は決定的な識別点ではない(それがなくてもカスピはありえる)と思われる。

黒海西岸では、michahellisと同所的に分布しているが、生態的隔離が見られ、したがって別種とするのが妥当である(Olsen)。ミトコンドリアDNAによる系統解析でもmichahellisを含む地中海クレードと、cachinnansを含む中央アジアクレードの間に、遺伝子流動はほとんど見出されなかった(Liebers2001)。cachinnansの分布は、モスクワ、ポーランド、ドイツへ拡大しており、ポーランドではmichahellisと交雑しているらしい(Olsen)ので、もしこれがほんとうなら生殖的隔離は完全ではないことになる。

今日では、L.cachinnansは、Caspian Gull、L.michaellisはYwllow-legged Gullといわれることが一般的となった。種が分離されるとき、基亜種が以前の呼称を引き継ぐのが一般的だと思うが、この場合では、基亜種が変更された。これはヨーロッパでおもに見られるのがmichahellisであり、なおかつmichahellisのほうが足が黄色いことによると思われる。日本での呼び方もこれに影響された。550図鑑、590図鑑の「キアシセグロカモメ」は混乱のもととなった(掲載された写真にも誤りがあった)。モンゴルもカスピもそれほど足が黄色くはない(カスピは冬には黄色味はさらになくなるという(Garner))ので、キアシセグロカモメがL.michaellisを示す語になるのは好ましい。もちろん日本ではキアシセグロカモメは観察されていないし、これからも難しいだろう。

Olsenは、L.cachinnansを、基亜種、barabensis、mongolicus3亜種からなるとした。しかし、分子系統学的研究から、barabensisはホイグリンカモメに、mongolicusはオオセグロカモメに近縁であることがわかった。barabensisはホイグリンカモメの亜種、または独立種として、mongolicusもセグロ(またはオオセグロ)の亜種、または独立種として考えられるようになっている。したがって、L.cachinnansにはとりあえず亜種はなくなる。
しかし、Liebersらが2004年に解析したセグロカモメ複合体のハプロタイプネットワークをみると、cachinnans内に高い遺伝的多様性があり、遺伝的な構造が少なくとも2つ見られる。今後、cachinnansは少なくとも2種(または2亜種)にスプリットされる可能性がある。

追加120203: 「タイミルセグロカモメ」111211千葉県を追加した。



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