分類学の限界 ヒワ類の系統(1)

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Oriental greenfinch Chloris sinica kawarahiba adult ♂130211/adult ♂130217/adult ♀130217 Japan.亜種オオカワラヒワ130211/17千葉県。
人は外部形態と色彩の微妙な差異に鋭敏に反応する。鳥類など種認識を視覚にたよる生物に対しては特に当てはまる。一方で系統を見ることはできない。ヒワ類の分類は昔から論争の的であったが、近年の分子系統学的研究によればマヒワ属、オオマシコ属、ギンザンマシコ属、カナリア属、スミレフウキンチョウ属が側系統(または多系統)であることが判明した。
→B.Nguembock et al (2009) Molecular phylogeny of Carduelinae (Aves, Passeriformes, Fringillidae) proves polyphyletic origin of the genera Serinus and Carduelis and suggests redefined generic limits
→D.Zuccona et al (2012) The phylogenetic relationships and generic limits of finches (Fringillidae)
日本鳥類目録改訂第7版では、カワラヒワ属Chlorisが第4版以来58年ぶりに返咲いた。これまでカワラヒワの属したマヒワ属Carduelis が明らかに単系統ではなく、さらにマヒワを含むクレードとカワラヒワを含むクレードはCarduelis 内で遠縁であることより、カワラヒワ属の復活は妥当である。
ハシグロナキマシコがカワラヒワ類の姉妹群であることが判明したことも分子系統の目覚しい成果である。同時に形態学が系統の遠近にいかに非力かを示した。
→J.Zamora et al (2006)Rhodopechys obsoleta (desert finch): a pale ancestor of greenfinches (Carduelis spp.) according to molecular phylogeny
ナキマシコ属Rhodopechys はアフリカからユーラシアの乾燥地帯に分布し砂色の羽色と複雑な囀りが特徴である。この属の3種ナキマシコ、モウコナキマシコ、ハシグロナキマシコのミトコンドリア・シトクロムbの分子系統学的研究によれば、ハシナガナキマシコは他の2種とは遺伝的差異が大きく、ナキマシコとモウコナキマシコを同属とするなら、ハシナガナキマシコはカワラヒワ属に入れるのが妥当と思われる。遺伝的距離から求めた分岐年代はナキマシコ/モウコナキマシコが680万年前であるのに対して、ハシグロナキマシコと他のカワラヒワ類の分岐は600万年前である。黄色味が強く単純な鳴き声のカワラヒワはハシナガナキマシコと大きく異なる。一方でハシナガナキマシコとモウコナキマシコは淡色の体色のみならずピンクの翼まで似ている。比較的遠い系統でもハビタットが近ければ形態は収斂するだろうし、近い系統でもハビタットが異なれば形態の差は急速に広がるだろう。形態や生態に頼る分類学者が系統の遠近を見定められなかったのを誰も咎めることはできない。

続く→属を選択するとは分類体系の表明である ヒワの系統(2)



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属を選択するとは分類体系の表明である ヒワの系統(2)
Excerpt: Eurasian Siskins adult ♂♀130217 Japan. ヒワの系統(1)で、カワラヒワをマヒワ属Carduelis から分離することは妥当とした。この根拠は分子系統学研究による..
Weblog: 鴎舞時 / OhmyTime
Tracked: 2013-03-10 16:16