ホイグリンカモメ第3回冬羽130329千葉県 カザフ-ホイグリン-タイミル・コネクション2 (追記)

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Heuglin's Gull third winter (with Vega Gull, Black-tailed Gull and Temmink's Cormorant) 130329 Japan.
体がコンパクトで背が濃く翼が長いためウミネコを思わせる特徴的な個体。頭部は白く後頸に細かい斑が点在する。背の灰色の濃さはウミネコと同程度。初列風切の黒は多くP4まではっきり見えP3にも僅かにあるようだ。初列端の白はP6から外側が小さくなっている。P10ミラ-は小さくP9にミラーはない。嘴は鮮やかな黄色、上下に黒斑が帯状につながり下に赤が覗き先端は白っぽい。虹彩は黄色、足はピンクと黄色が混じったような微妙な色合い。初列雨覆に暗褐色斑があり、尾に黒帯が若干残っており、嘴の上下に明瞭な黒斑があることより本個体は第3回冬羽である。

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Heuglin's Gull 130329/120121/110206 Japan.
頭部と全身それぞれ、今回観察されたホイグリン第3回(上)、昨年観察されたホイグリン第2回(中)、そして一昨年ホイグリンかカザフセグロかで話題になった第1回(下)を並べた。これら3者のjizzは見事に一致している。細部を確認する。
頭部の形:眼よりやや後方になだらかなピークがあり眼より前方で傾斜が僅かに急になる。眼の周囲:眼の前方に三日月形の特徴的な暗色部がある。眼の上に眉状に白い部分がある。その直前が襞になって見える。目尻に暗色のラインが入る。嘴の形:上下嘴に特徴的な溝がある。体形:全体的にコンパクトで翼が長い。そぎ落としされたような胸。これらの特徴は3者(もしくは2者)に共通している。足の関節の形状もほぼ一致して見える。以上はすべて同一個体として矛盾はない。
虹彩の色:淡色←やや淡色←暗色。背の灰色(セグロと比較して):かなり濃い灰色←濃い灰色←やや濃い灰色。これらの漸次的変化も同一個体の成長過程として問題ないと思われる。以上より、130329個体、120121個体、そして110206個体は同一と断定していいだろう。

一昨年この個体について、背の灰色がホイグリンにしては濃くない、翼下面が白い等の特徴からカザフセグロの可能性を指摘した。
カザフセグロカモメ第1回冬羽110206千葉県(改訂110320)
カザフ-ホイグリン-タイミル・コネクション110221千葉県(改訂110310)
Olsen(2003)によれば、
1) カザフセグロの背の灰色の濃さはコダック・グレー・スケールの7-8.5であり、ホイグリンの8-11と比べると、若干オーヴァーラップがあるもののかなり薄い。今回観察された第3回の灰色は平均的なウミネコと同等かやや濃いくらいであった。カザフの上限を明らかに超えていると思われる。
2) カザフセグロの冬羽への換羽はカスピセグロより1~2ヶ月遅くホイグリンと同じくらいであるが、夏羽への換羽はカザフのほうがホイグリンより早く、ホイグリンでは3月でも頭部のパターンは85%が冬羽であるのに対し、カザフでは2月ですでに95%が夏羽になっており頸部の斑はない。この個体の後頸には明らかに冬羽に特徴的な斑が見られる。
以上より、この背の濃い個体はカザフセグロカモメではない。また、背の濃さ、スマートな体形等よりタイミルセグロカモメでもない。ホイグリンカモメとするのが妥当である。
他に検討すべきがあるとすれば、日本未記録のニシセグロカモメLarus fuscus か。日本により近いスカンジナビア半島東部の基亜種はホイグリンより明らかに背が濃く、翼も長いので本個体には当てはまらないが、西部のL.f.intermedius/graellsiiはホイグリンに形態がより近いからである。

一昨年の個体はカザフセグロであるという仮説は継続的な観察により見事に反証されたわけだ。仮説は反証されることで科学足りえる。科学的な識別過程はバード・ウォッチングの喜びをより深いものにしていくと確信する。

以上は次の指摘あってこその考察である。おでん屋さん、ざきさん、Ujimichiさん、そして管理人さんに感謝!
Gulls Board No.5081

追記130403:
上記でニシセグロカモメLarus fuscus を日本未記録としたが、これには説明が必要だろう。
① 『日本鳥類目録改訂第7版』に302.Larus fuscus ニシセグロカモメが記載された。しかし確認された亜種は302-1.L.f.heuglini である。heugliniは、HBW(1996)でもL.fuscus の亜種とされている。ただし、両者は分布に重なりがあるにもかかわらず交雑が起こっていないので、別種としたほうが良いと記してもいる。HBW以降に出版された主要な図鑑たとえばHBIや本ブログでたびたび登場するOlsenのGullsはheuglini を別種としている。CrochetのグループやLiebersのグループ等が2000年代にDNAによる分子系統学的研究を積極的に大形カモメに適用したが、いずれの研究でもheuglinifuscusの亜種とすべき結果は出ていない。したがって、『鳥類目録』にあるように、heuglinifuscusの亜種とすることには妥当性はない。
② 『山階鳥学誌』41.18-の短報でニシセグロカモメL.fuscus の記録が報告された。しかし、論文の写真を見る限り背が黒くなく(亜種にもよるが)翼も長くなくjizzもL.fuscusには当てはまらないと思われる。タイミルセグロカモメ(かもしくはホイグリンカモメ)であろう。
『BIRDER』2013年2月号45頁のニシセグロカモメもタイミルセグロカモメ(かもしくはホイグリンカモメ)。
→氏原巨雄さんの長崎県のアイスランドカモメ、ニシセグロカモメの記録について

追記160216: 本エントリーの画像1が、BIRDER 2016年2月号経年観察だからこそ識別できた、あるホイグリンカモメの観察記録に掲載された。

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この記事へのコメント

  • Ujimichi

    当初から只者ではない雰囲気の個体でしたが、
    やはり素敵な個体に成長しましたね!
    私は昨年1月17日以来会えてないのですが、
    画像を拝見してこうした継続観察の素晴らしさを
    改めて実感しました。
    2013年03月31日 19:03
  • seichoudoku

    夕食の間にコメントが!気合を入れたエントリーに速攻の応答は嬉しいです。今期はこの個体に出会うためにあったといっても過言ではありません。第2の製氷工場前で発見した瞬間やったー!!4分後には飛び立ってしまいましたがなんとか最低限の画像を残せました。
    この個体に決着をつけることができてほっとしています。カザフでなかったのはちょっと残念ですが。
    2013年03月31日 20:17
  • おでん屋

    うわぁああああああ! この顔ヤバイです!ほとばしるウミネコ臭!僕は30日に最後の探索のつもりで行っていたんですが会えませんでした。
    2013年03月31日 22:50
  • seichoudoku

    ですよね!おでん屋に見せてあげたかったなー(笑)
    顔だけじゃないですよ、まあウミネコも同じLarusだから形態形成にかかわる遺伝子セットはほぼ同じですからね。
    この子にはご子のように常連になってほしい。4W誰が見つけるか、楽しみです。
    2013年04月01日 07:13

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ホイグリンカモメ第1回冬羽110206千葉県(改訂110320、130331)
Excerpt: Heuglin's Gull Possible Steppe Gull Larus (heuglini/cachinnans) barabensis first winter 110206..
Weblog: 鴎舞時 / OhmyTime
Tracked: 2013-03-31 16:30

ホイグリンカモメ第2回冬羽120121千葉県(追記130402)
Excerpt: Heuglin's Gull second winter with Vega & Slaty-backed Gulls 120121 Japan. 一際目についた。背の濃さはオオセグロと同程度。スマ..
Weblog: 鴎舞時 / OhmyTime
Tracked: 2013-04-02 20:32

ホイグリンカモメ第5回冬羽141101千葉県
Excerpt: Heuglin's Gull fifth winter (with Black-tailed Gull and Vega Gulls) 141101A Japan. 上面の灰色はウミネコと同程度で翼..
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Tracked: 2014-11-04 23:25

ホイグリンカモメ第6回冬羽「ね子」151107千葉県
Excerpt: Heuglin's Gull 151107A/130329/120121/110206 Japan. 2011年2月、カザフセグロカモメではないかといわれた大形カモメと同一と思われる個体151107..
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Tracked: 2015-11-11 23:00