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zoom RSS シギ類の年齢識別に「暦年(カレンダー・イヤー)」は適切ではない!?

<<   作成日時 : 2018/08/04 16:35   >>

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私がcalender-yearという聞き慣れない用語に最初に出くわしたのは、絵が素晴らしく今でも最高の図鑑の一つであるLars Jonsson(1992/1996)のBIRDS of EUROPEをぱらぱら繰っていた時だった。calender-year用語(ターミノロジー)に1ページが割かれている。以下まとめてみる。

1st cal-year: 羽衣に関わらず、孵化してからその年の12月31日まで。
2nd cal-year:翌年の1月1日から12月31日まで。3回の羽衣の変化、即ち、幼羽→第1回冬羽→第1回夏羽→第2回冬羽の換羽が行われうる。
calender-yearの同定が必要とされる鳥種は、羽衣の発達が遅く幼羽から成羽に変わるのに数年かかり、移行的な羽衣が長期間に及ぶ種である。イヌワシなどの大形の猛禽は、夏羽と冬羽の明確な差異がなく、1時期に3世代(以上)の羽を持つことがあるため、その齢識別にcalender-yearが選ばれることがある。必要に応じて、calender-yearに季節が付け足されることがある。その例として、イヌワシの幼鳥1st-cal秋、幼鳥2nd-cal春から成鳥6th-cal以降まで図示されている。2nd-cal秋から3rd-cal春への換羽の過程で3世代の羽毛、3nd-cal秋から4rd-cal春への換羽の過程で3(〜4)世代の羽毛が見られることがわかる。
猛禽以外でも、大形海鳥で用いられることがある。生まれた翌年の7月、第1回夏〜第2回冬のクロトウゾクカモメの齢は2nd-calとなる。


なるほどな、と感じるところはあったが、私の興味はシギチドリ類とカモメ類にあり、ワシ類の齢識別の必要性に迫られることがなかった。夏冬で羽衣の差があるものの、2回目の冬の完全換羽でほぼ成羽になってしまうシギの場合、calender-yearが必ずしも便利とはいえない。第2回冬と第3回冬の識別は現実的ではなく、いずれも成鳥冬羽で済むからである。3世代の羽毛が混在するのも、ワシと違い、第1回夏の頃だけである。だからこそ、3世代の羽が第1回夏の識別点となりうる(ワシではそうはいかない)。
カモメ類は成羽になるまで数年かかるが、幼羽から成羽への齢毎の変化の過程が比較的分かりやすくパターン化されていて、さらに体部の斑の多寡や初列の新旧羽で夏冬も識別が可能なので、慣れてしまえば、第2回冬、第3回冬とか識別ができる。こうしたこともあり、calender-yearをフィールドで使うことはこれまで全くなかった。

最近、鳥の齢識別が注目されるようになり、calender-yearに言及される機会が増えたのだが、その使用例や訳語に暦年(れきねん)が充てられることには違和感を持つ。例えば、BIRDER2018年5月号NerdBirds鳥見学への誘いに、次の一文がある。
非常にややこしいのだが、一般的にシギの年齢を数える場合、12月31日は「1暦年」、1月1日からは「2暦年」となる。
ここに問題は二つある。
1)シギの年齢にcalender-yearを利用することは一般的ではない。ワシのように利用すべき積極的な理由が見当たらない。幼羽、第1回冬羽、第1回夏羽、成鳥冬羽(第2回冬羽)、成鳥夏羽の用語で十分である。筆者の記す通り、わざわざcalender-yearを使って話しをややこしくする必要はない。
2)calender-yearの訳語を「暦年」とすべきではない。カレンダーによって齢を定義するのが暦年齢であるが、『広辞苑』によれば、「暦年齢」は「生活年齢」に同じとあり、「生活年齢」には、「数え年と満年齢の2通りの数え方がある」。「暦年」だと、数え年なのか満年齢なのか分からない。生まれた年を1歳とするのであれば、「数え」とすべきである。ただし、鳥に対して、数えで2つとかピンと来ないが。

数え年は私の祖父母の世代が使っていた。満年齢に慣れ親しんだ私には数え年に馴染みがなく分かりにくかった記憶がある。元旦を基に国民が一斉に加齢されるのは、公的制度の適用が煩雑にならないといった実用的な面があるのかと思う一方で、共同体至上主義的・全体主義的な匂いも感じた。欧米では鳥に限らず子馬などをcalender-yearで齢を数える習慣があるらしいが、私たちにはそうした習慣がない。なので、個人的には数えで鳥の年を数えなくていいかなと思っている。

ワシなどの齢識別で必要であるのなら、やはり満年齢がわかりやすい。「マーリン通信」で若杉稔さん(2013)が「【提案4】 タカ類・ハヤブサ類の年齢も 0歳、1歳、2歳、… にしよう!」と題して、タカ類の齢表記について提案している。
「第〇暦年」は、羽衣が一番安定している冬にまたがってしまいます。例えば、第2暦年冬というと1年目の1,2月のことか、2年目の11,12月のことか分からなくなりますので、これは使い方に気を付ける必要があります。
と記したうえで、
人間の年齢の表し方の、「0歳、1歳、2歳、…、」に私たちは慣れているわけですので、「0歳冬」とか、「2歳夏」などという表し方のほうが、はるかに分かりやすいことと思います。これならば、「0歳秋」も、おかしくありません。秋の渡りは、「0歳秋、1歳秋、2歳秋、…」と、表現できます。春の渡りの、「0歳春、1歳春、…」を使ってもまったく違和感がありません。
と満年齢の合理性に言及している。一方で、
しかし、この表現方法に難点がないとは言えません。ちょうど換羽をしているころの夏は、たとえば、「0歳の終わりから1歳の始めにかけての夏に初めての完全換羽をする」などという表現をせざるを得なくなります。
と難点を記すことを忘れていない。
私はワシ類については、分かりやすいので満年齢は賛成である。しかし気になる点がある。それは、原理的に生年月日が不明の鳥たちの満年齢を決定できないことだ。いつ生まれたかわかなければ、いつまで0歳なのか決められず、年齢は恣意的になってしまう。0歳から始めて、恣意性を排除するとどうなるか。生まれた年の12月31日までを1歳としないで0歳とし、次の1月1日から12月31日までを1歳とする、暦年もありかな、とも思ったのだけれど、これでは依然暦年問題は解消されず、もとの木阿弥である。
若杉さんは、
どんな表現方法を用いても大なり小なり難点はあるものです。その中で、どれが一番分かりやすくて、どれが一番正確に伝えられるかという視点が大事だと思います。
と締めくくっている。一筋縄ではいかない。

「第1回冬羽」、「第1回夏羽」、「第2回冬羽」等の用語は、少なくとも夏羽冬羽の差異が比較的わかりやすいシギチドリ類やカモメ類では便利である。なのでウォッチャーの間ではフィールドで普通に使われる。第1回冬羽は、はじめの冬の換羽で出る羽毛である。完全換羽ではないので幼羽と第1回冬羽は混在する。「第1回冬羽」は、幼羽から第1回冬羽へ換羽する時期の鳥自体(個体)の別名でもある。羽衣と個体は別だという人もいるが、体の一部でその人を表す比喩は日常でも普通なので、特に問題はないと思う。

ところで、ワシには同一個体に4世代の羽が存在しうるようだが、シギにも場合によるとあるかもしれない。
画像
Spotted Redshank first summer 060919 Japan.

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