カスピセグロカモメ?幼羽190119千葉県(追記190126)

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Possible Caspian Gull Larus cachinnans cachinnans molting juvenile 190119 Japan.
その異国情緒溢れる風貌を一見して、直ちに頭には一つの答えが浮かんでいた。しかしちょっと待て、結論を急いではいけない。いくつかの押さえておかねばならない特徴を確認し、かつ撮影するまでは。
この日のカモメは今季最高の出で、礁前に腰を据えて第二漁港方向へ1羽ずつ確認していく。並んだカモメ類はほぼ大形で見つけがいがある。遠くなるにつれて込み入って折り重なる。奥まった地点でオオセグロの肩越しに其カモメの長い首が突き出た。距離は150m、とにかく通過する船が飛ばす前に証拠写真を撮っておかねばならない。デジスコで数枚撮ったが、手前のカモメたちの後方をうろうろ落ち着かないためろくな写真にならない。この地点で飛ばれたらデジスコでは撮り損ねる可能性が高い。一方で、機材を持っての移動中に見失うリスクも低くない。しかし、一眼のレンジまで走るしかない、と判断。祈るような気持ちでターゲットまで90mの距離の地点へ急ぐ。はやる気持ちを抑え双眼鏡を向ける。よっしや、まだいる。撮るべきは、初列風切のパターン、そして尾のパターンだ。伸びをするのを待つ。しばらくするうちにカモメたちがぱらぱらと飛び立ち始めた。来る、一眼を構える。隣のセグロカモメが飛ぶのを確認したところで連写を始める。しっかりとした手ごたえを感じた。ので、液晶での確認は怖くなかった。果たしてそこには、写るべき特徴が見事にとらえられていた。

額のスロープ、口角の線よりかなり上方に置かれた小さな眼、頭部のこの独特なjizzこそ異国風の所以だ。まず確認すべきは黒い翼である。飛翔シーケンスに残された形質を見てみる。
初列雨覆はほぼ暗色。大雨覆もセグロやモンゴルのように淡色ではなく、その暗色が次列の黒に重なる。そして何より特筆すべき特徴が、モンゴルでは目立つ内側初列風切の淡色ウィンドウが、このカモメにはほとんど無いところである。
幼鳥の初列にウィンドウのない大形カモメはさほど多くないので列挙してみる。①オオカモメ、②ミナミオオセグロカモメ、③アメリカオオセグロカモメ、④キアシオオセグロカモメ(Yellow-footed)、⑤キアシセグロカモメ(Yellow-legged)、⑥カスピセグロカモメ(Caspian)、⑦カザフセグロカモメ(Steppe)、⑧ニシセグロカモメ(Lesser Black-backed )、⑨ホイグリンカモメの9種である。

このカモメのさらなる顕著な特徴は尾のパターンである。モンゴルを思わせる比較的狭いテール・バーを見た時は感無量。②ミナミオオセグロカモメ、③アメリカオオセグロカモメ、④キアシオオセグロカモメの3種の幼鳥の尾は基部近くまで暗色である。⑦カザフセグロカモメ、⑧ニシセグロカモメ、⑨ホイグリンカモメの幼鳥の場合は、テール・バーの態をなすもののその幅は広い。
初列ウィンドウがなくかつテールバーが狭いカモメは、①オオカモメ、⑤キアシセグロカモメ、⑥カスピセグロカモメの3種に絞られる。
まず、①オオカモメの可能性はあるだろうか?スコープでの第一印象は、体はやや大きくは見えたが、嘴はさほどごつく見えなかったので検討するまでもないと思われた。しかし、画像1を見ているうちに、下嘴角がカスピにしては発達し過ぎてはいまいか、と感じるようになった。目が小さいところもオオカモメの特徴に合う。そこで、オオカモメの各部のサイズと質量をオオセグロ、カスピ等と比べてみた。オーバーラップはやはり、ないかあっても僅かで、銚子のカモメ類の群れにもしオオカモメが舞い降りたら、やはり図抜けた存在感を示すだろう。複数の写真を見ても、オオカモメの下嘴角の発達は別格であり、当該カモメとは別物である。画像2を見る限り、手前のオオセグロ♂より嘴は華奢に見える。
⑤キアシセグロカモメは、カスピに比べると、体はずんぐりとしていて、頭部は大きく四角い。嘴はオオカモメほどではないにしてもごつく先はかぎ状になる。足も太い。このような特徴は当該カモメに合致しない。地中海周辺で生活し移動性は高くない。こうした生態面からも、日本へ迷行する可能性はほぼ無い。
したがって、①オオカモメ、⑤キアシセグロカモメとも除外することができるだろう。
結論:このカモメはカスピセグロカモメである。
さて、カスピだとして、当初から、凄い違和感が付き纏っていた。その換羽の遅さである。海外で撮られた写真を見る限り、1月中旬ともなれば、カスピは摩耗と褪色で真っ白になっているはずなのだ。それなのに、このカモメといったら、肩羽のごく一部に第1回冬羽が出ているものの、ほぼフレッシュな幼羽なのである。こんな幼羽は遅くとも初秋までだ。齟齬をどう考えるか。そもそも、日本へ渡ってくることからしてイレギュラーなのだから、この個体が異常に遅生まれか成長が極端に遅れたと考えるのもあながち外れとはいえまい。
こんな幼羽を遠い繁殖地まで往かずして見られた幸運に感謝すべきだろう。


追記190126: タイトルを「カ●●セグロカモメ幼羽190119千葉県」から「カスピセグロカモメ?幼羽190119千葉県」に変更した。コメントでUjimichiさんより、ウィンドウの目立たないモンゴルセグロカモメの示唆をいただいたの受け、タイトルとブログ紹介画像のキャプションには?を付し、エントリーの画像キャプションにもPossibleを加えた。

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この記事へのコメント

  • Ujimichi

    この個体は私も14日と22日の2回観察しました。特にテールバンドの狭さがかなり強烈で、確かに目を引く個体でしたが、私は今のところモンゴルの換羽の遅い個体が最も近く、カスピではないように感じています。これまで収集した中国・韓国などの画像や、以前の上海での観察などから、モンゴルの初列風切のウィンドウはかなり個体差があって、この個体のようにかなり狭く目立たない個体が意外と多くいるように感じています(これは成鳥の初列風切の黒色部が「個体差がありつつもセグロより多い傾向」によく合致している気もします)。また静止時に見える範囲の大雨覆の白色部の広さや、全体に白黒のコントラストの強い羽色もどちらかというとモンゴル的で、嘴や足の長さを含めた構造的なjizzもカスピとしてはまだ弱い(もちろん個体差等はありますが)かなと感じました。この個体はまた観察できるかもしれないので、今後も注目したいと思います。
    2019年01月25日 20:43
  • seichoudoku

    Ujimichiさんコメントありがとうございます
    このエントリーを投稿した後ずっと気になっていたのが尾の黒帯が狭すぎることでした。ネットでカスピ幼の画像を見ていると狭いのもあるのですが意外と広い。たぶん東部のカスピはカザフ経由でホイグリンの遺伝子が侵入していて、暗色帯が広い傾向にある可能性があると思います。そうすると、この暗色帯の狭いカモメがカスピだとすると西部の個体と考えられる。おそらく西部の個体は東部のカモメの形質と比べてより「カスピ的」な形質を持っているはず。その観点から見るとこのカモメは「カスピ的」な形質が強いとは必ずしも言えない。であれば、この暗色帯の狭さは西部カスピ的というよりモンゴル的といえるのではないか、と考えることもできます。そこで、初列ウィンドウのないモンゴルがいるのか、今まさに調べていたところでした。あまりにもタイムリーなUjimichiさんのコメントに驚いています。この個体、今後どのように換羽していかなるカモメになっていくのか、めちゃくちゃ楽しみです。バラもどきがホイグリンに成長していったように、これがカスピもどきでモンゴルに成長していくのか、そうでないのか、今季後半のみならず、来期以降も期待です。
    2019年01月25日 22:30

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