オオセグロカモメ、嘴の異常、ホメオーシス!?210319千葉県(追記210326)

Ls1w210319銚子 (272).jpgLs1w210319銚子 (273).jpgLs1w210319銚子 (135).jpgSlaty-backed Gull 2nd winter with aberrant bill 210319 Japan.
上嘴が湾曲して(おそらく)下嘴を貫通し、下嘴は伸長しさらに先が(下嘴角はあるのだが)上嘴様の表現型を模写しているように見える。まるで上嘴が上下についているように見えた(画像3は普通のオオセグロカモメ)。

下嘴が上嘴になりうるか考察する。
エビの眼柄を人為的に切り取ると触角が再生する。また、カマキリの触角を切断すると歩脚が再生する。このような、特定の形態が通常とは別の位置に発現する現象をウィリアム・ベイトソンはホメオーシスと呼んだ。昆虫と鳥類の再生能力はかなり異なる。なので鳥の下嘴を除去して上嘴が再生することは有り得そうにない。しかし、発生初期に何らかの攪乱があったらどうだろうか。
ショウジョウバエは、その胚にエーテル処理をするとバイソラックス(双胸)となる。バイソラックスとは後胸が中胸に変化することで平均棍が前翅となり4枚羽(前胸ー中胸ー中胸)となる表現型である。こうした環境攪乱、たとえば環境ホルモン様化学物質の暴露が嘴形成に関わるカスケードに作用し下嘴の重複を起こす可能性はないだろうか。
環境攪乱で生ずるこの中胸の重複は、ウルトラバイソラックス(Ubx)遺伝子の突然変異でも起こる。同様の仕組みで、下嘴を形成する遺伝子の突然変異で下嘴の位置に上嘴が発現するすなわち上嘴の重複の可能性はあるだろうか。
ホメオーシスを起こす突然変異はホメオティク突然変異と呼ばれる。その一つの例であるUbxはホメオボックスという特徴的な配列を持つHox遺伝子の一つである。Hox遺伝子群は前後(頭尾)軸に発現することで体節を特定の形態に分化させる。Hox遺伝子群の発現パターン(Hoxコード)が変化すれば、脊椎動物でもホメオーシスは起こる。例えばヒトの頸椎は胸椎に置き換わり得る。
顎の出現は脊椎動物の進化で最も革命的なイヴェントといわれる。そのため体節同様、顎に関するエボデボの研究も盛んに行われている。
嘴は顎に形成される。上嘴のつく上顎も下嘴のつく下顎も前後軸の体節で見れば同じ節に位置する。なのでHoxコードでそれらの分化を説明することはできない。
上下顎の分化は上下(背腹)軸のDlxコードで説明できる。後に顎を形作る咽頭弓の腹側半で発現するDlx5とDlx6を人為的にダブルノックアウトすると、下顎のアイデンティティは失われて、下顎が上顎の形態を伴って分化する。
こうした事実を考慮すると、先天的にも後天的にも下嘴が上嘴のような形態になることはあり得るのではないか、と思われる。

オオセグロカモメ第2回冬羽、ハサミアジサシ様嘴090402千葉県

追記210326:
この個体は3月19日見られたカモメで最もインパクトのあるカモメであった。しかし、第2漁港製氷工場前のかなり遠い防波堤上にいたため細部の観察がかなわなかった。当日はRIOさん𝑂𝑝𝑠𝑎𝑟𝑖𝑖𝑐𝘩𝑡𝘩𝑦𝑠さん等数人のウォッチャーがいた。この個体の嘴の詳細を撮影された方、連絡ください!

参考文献
ホール(1998/2001)『進化発生学』pp558-566
Carroll et al (2001/2002)『形づくりと進化の不思議』pp135-140
ギルバートら(2009/2012)『生態進化発生学』pp264-297
倉谷(2017)『新版動物進化形態学』pp297-338

エボデボに興味のある人必読の書












posted by seichoudoku at 00:00Comment(0)

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