ハシナガウグイス180726国立科学博物館

Horornis (diphone) diphone 180726 National Museum of Nature and Science, Tokyo. 小笠原・硫黄島の(亜種)ハシナガウグイスは本州の亜種ウグイスより17年も先に記載されている基亜種である。ハシナガウグイスはいずれ種に昇格するだろうから亜種ウグイスも学名が変わることになるだろう。 これまでウグイス属はヨーロッパウグイス…

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ヤナギムシクイは輪状種ではない!?(Ⅱ)

承前 輪状種とは何か チワワからグレート・デーンまで、イヌの品種を大きさの順に隣の犬種とのみ交配できるように1列につなぐ。チワワからグレート・デーンまで途切れることなく両隣同士の犬種は交配可能である。だからこそイヌは1種とされる。それを大きな池の周囲に、列の両端、即ちチワワとグレート・デーンが接するように整列させてイヌの輪を作る。イヌの輪は交配を通じて遺伝子が交換される。ただ1か所、遺伝子の…

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ヤナギムシクイは輪状種ではない!?(Ⅰ)

ヤナギムシクイは輪状種の有名な例の一つとされてきた。輪状種とは、生育できない地域の周囲を取り囲むように分布域を拡大した生物種がその両端で接触した時交雑不能となった状態である。種分化には通常地理的隔離が必要とされる。輪状種は、地理的隔離がなくても種分化が起こりうることを示している。 Irwinらによる輪状種としてのヤナギムシクイの研究を振り返り、ヤナギムシクイの種分化と分類について考察した。 …

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ドードーを出版してはならない

ドードーには不吉なジンクスがある。すなわち、ドードーの研究者は本が完成する前に必ず死ぬ。 「私がそのジンクスを破ってやる」 沖縄諸島と先島諸島との間に引かれた生物地理学的境界線にその名を残す、鳥類学者であり探検家の、蜂須賀正氏(はちすかまさうじ)はドードーの呪いに挑んだ。 1920年、17歳の蜂須賀はイギリスに渡った。留学は当初法律が目的だったが、彼が熱中したのは法律ではなく鳥類学だった。…

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コウノトリ目の混迷 コウノトリ041228千葉県(改訂130419)

Orintal Stork 041228 Japan. 1990年のシブリー&モンローのDNA-DNAハイブリダイゼーションによる鳥類の系統には心底驚いた。なんせ、ハヤブサも、コンドルも、タカも、ミフウズラも、シギチドリも、シュモクドリも、ペリカンも、サギも、トキも、ペンギンも、ミズナギドリも、アビも、ネッタイチョウも、サケイも、フラミンゴも、カイツブリもみんなコウノトリ類なのだから。20世紀…

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属を選択するとは分類体系の表明である ヒワの系統(2)

Eurasian Siskins adult ♂♀♂130217 Japan. ヒワの系統(1)で、カワラヒワをマヒワ属Carduelis から分離することは妥当とした。この根拠は分子系統学研究による単系統性だ(たとえばZuccoaら2012)。ミトコンドリアDNAの分子系統学に従えば、キバラカワラヒワ、ベトナムカワラヒワ、ズグロカワラヒワ、カワラヒワ、アオカワラヒワ、ギンバネマシコ、ハシグロ…

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分類学の限界 ヒワ類の系統(1)

Oriental greenfinch Chloris sinica kawarahiba adult ♂130211/adult ♂130217/adult ♀130217 Japan.亜種オオカワラヒワ130211/17千葉県。 人は外部形態と色彩の微妙な差異に鋭敏に反応する。鳥類など種認識を視覚にたよる生物に対しては特に当てはまる。一方で系統を見ることはできない。ヒワ類の分類は昔か…

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ヤブキリ♀120811千葉県

ヤブキリの鳴き声は多様だ。鳴き声は種認識に決定的だからこれが違えば別種と考えるのは妥当である。それで2006年出版の『バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑』でヤブキリは17種に分割された。2011年の『バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑』では4種にまとめられたが、当事者たる鳴く虫の耳ほどには人の眼に差異を示せないことが大きな理由だろう。人による分類はあくまで便宜であり、配偶する生物同士の種認識と…

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扁形動物の系統、オオミスジコウガイビル110702千葉県(改訂110708)

オオミスジコウガイビル110702千葉県。キビタキの囀る雨上がりの林に見つける。数十センチの大きな個体に寄り添うように小さいのがいた。 『動物たちの地球63』(朝日新聞社1992)によると、1968年夏に皇居で見つかり話題となる。1982年に新種として記載される。東南アジアからの移入種と考えられる。 コウガイビルはプラナリアなどとともに、扁形動物門、渦虫綱の三岐腸類(ウズムシ目)に分類さ…

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サバンナシトド101128千葉県(改訂161224)

Savannah Sparrow with Eurasisn Tree Sparrow 101128 Japan. サバンナシトドとスズメ(右下)101128千葉県。スズメの小群がアシに飛んできた。その中に1羽、腹の白く見えるホオジロ類が見えた。オオジュリンかと思い双眼鏡を向けると、脇にビンズイを思わせる濃い縦斑が顕著だった。この1ショットを撮影した直後に、5羽のスズメとともに飛び去ってしまい…

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鳥は二度飛んだ! シギダチョウの進化

Elegant Crested Tinamou カンムリシギダチョウ090818国立科学博物館。第1趾は退化している。配偶システムは乱婚。 Brushland Tinamou アレチシギダチョウ100101我孫子市鳥の博物館。 シブリー&アールクィストの分類では、シギダチョウ目はダチョウ目と古顎類を構成していた。しかし、2008年のキンブルらの分子系統学的研究で、意外にもシギダチョウ目は…

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アカエリカイツブリ090302茨城県

アビに始まり、カイツブリが続く。鳥類図鑑の相場。『フィールドガイド日本の野鳥』も、『日本の野鳥590』も、"Bird Guide”も、"Sibey Guide”も、そう。だら新しい図鑑もそのつもりで開く。 それで面食らった。Bazilの"Birds of East Asia”だ。アカエリカイツブリの出ていそうなところを開けばキジが出てきた。その次がカモ、その次にアビ、ミズナギドリ、その後、サギ…

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ジャノメドリはクイナのようなヨタカなのか

アメリカ科学雑誌サイエンス2008年6月27日号に掲載されたキンブルらによる5頁足らずの論文は、鳥好きにとってほんとに味わい深い。これまで何度も取りあげてきたのだが実はまだまだ面白いネタがある。そのうちの一つ。 従来のツル目はばらばらに砕け散って、新しい系統樹では少なくとも4つのクレード(枝)に分離した。その中でもにわかには信じがたいのがジャノメドリの系統である。 ジャノメドリは中南米の水辺…

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コノハズク・ツミ・ハイタカの骨格/猛禽の系統

{インコ、ハヤブサ、タカ、フクロウ}のどこかに、系統に従って/を入れなさい、といわれたら、どこに入れるだろうか。次の三つの選択肢からより適切と思われるものを選んでみてほしい。 ①{インコ、ハヤブサ/タカ、フクロウ} ②{インコ/ハヤブサ、タカ、フクロウ} ③{インコ/ハヤブサ、タカ/フクロウ} まず、でたらめな①が消せるだろう。②は飼い鳥と猛禽と分けらるけど、タカとフクロウが似ている…

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ミフウズラはカモメにきわめて近い

ミフウズラの分類はこれまで迷走してきた。形態によるボック(1980)の分類では、ツル目。シブリー&アールクィスト(1990)のDNAハイブリダイゼーションによればミフウズラ類(ミフウズラ目)として独立し、チドリ類を含むコウノトリ類(コウノトリ目)やツル類(ツル目)との近縁は示されなかった。リブジー&ズシ(2007)の形態による分類では、ツル目、クイナ目、チドリ目とともにミフウズラ目はチドリ上目に…

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イシチドリの進化/鳥類の第三紀のビッグバン仮説は否定された

『鳥の起源と進化』の著者である著名な鳥類学者フェドゥーシアによる、第三紀に鳥の爆発的進化が起こったという仮説で重要な位置を占めるのが、イシチドリである。 この仮説のシナリオはこうだ。恐竜が絶滅した白亜紀の後期に鳥類もほとんどが絶滅した。そして絶滅を免れたのは祖渉禽類('Transitional shorebirds')と呼ばれる原始的なチドリ類であり、現在のイシチドリ類に近縁とされる。第三紀に…

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ハヤブサはタカよりオウムに近い

これまでハヤブサはタカの仲間とされてきた。そして、オウムの外見がハヤブサに似ているのは系統が近いからとは考えられてはいなかった。分類学者が形態の類似を軽視し、猛禽という機能による分類を過大に重視した結果である。しかし、こうしたこれまでの常識は分子系統学によって、ほぼ否定された。 これまで何度か取り上げてきたキンブルらの論文によれば、スズメ類(スズメ目)、オウム類(オウム目)、ハヤブサ類(ハヤブ…

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長脚のカイツブリ、それがフラミンゴ

カイツブリ、フラミンゴ。ともに分類学者を悩ませてきた。 想像を超えて、両者が系統的に手をつないだ。 カイツブリの分類: 古くから形態の類似からアビと近縁とられてきた。図鑑でも大概アビの次がカイツブリの定位置である。1935年、ストルペは両者の形質は収斂によると考えた。同様の生態が同様の形態に進化させた。イルカとサメのように。 ところが、1980年代の分岐学(系統学)の標準的教科書のひとつ『…

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カッコウ類はコンパクトなツルである!カッコウ普通型夏羽~冬羽080824千葉県(追記080909)

シギに夢中になっている間に山の鳥の渡りが始まっていた。ツツドリは8月20日から見られているそうだ。 羽衣を細かく見られたので換羽についてと、最近話題になった(?)カッコウ類の分類について触れたい。 Oriental Cuckoo nonbreeding 080824 Japan. ツツドリカッコウ普通型夏羽~冬羽080824千葉県。虹彩がオレンジ色で腹の横縞は太く間隔がやや広いことから…

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ムラサキマムシグサ・ウラシマソウ-080506千葉県

テンナンショウ属の植物はとても興味深い。 1) 可逆的に性転換する。今年は雄性個体が来年は雌性個体になったり、その逆もありえる。 複葉の小葉の枚数が多い→同化量が多い→地下の貯蔵庫に相当する球茎が大きい→雌性個体。その逆が雄性個体になる。 2) マムシグサ節※(マムシグサ類)は形態的差異が比較的明らかであるわりに、遺伝的差異が小さく、1種か30種かなる問が議論されるという点は、大形カモメ類…

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モグラの分類(追記070717)

日本のモグラMogera woguraは50年位前は、6亜種(コ、ヤクシマ、アズマ、キュウシュウ、コウベ、サド)を含む多型種と考えられていました(このうち3亜種を認めたのが黒田長礼です。長礼は山階鳥研の元所長の長久のお父さんで、カンムリツクシガモの発見者)。 今では複数の隠蔽種の集まりと考えられていて、6亜種のうち、ヤクシマ、アズマ、コウベ(Mogera wogura)、サドは種とされています…

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Larus heuglini 'taimyrensis'(「タイミレンシス」)とは

ここで採り上げる脚の黄色っぽいセグロカモメは、このブログでは、以前にも書きましたが、Larus heuglini 'taimyrensis'(「タイミレンシス」)とします。ホイグリンカモメの亜種とされる場合もありますが、' 'はホイグリンカモメとセグロカモメ(L.vegae)との交雑個体であることを含意しています。http://seichoudoku.at.webry.info/200605/a…

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