アジアのヨシガモの遺伝子がアメリカのオカヨシガモにある訳

アメリカのオカヨシガモのミトコンドリアDNA(mtDNA)を調べると、ヨシガモの型(ハプロタイプ)が5%も含まれています。
mtDNAのハプロタイプは、とりあえずミトコンドリアのABO式血液型みたいなものだと思ってください。オカヨシタイプをA型、ヨシガモタイプをB型としましょう。北アメリカで20羽のオカヨシを捕まえてミトコンドリアのDNAを調べると1羽がヨシガモタイプのB型で、19羽はオカヨシタイプのA型となります。
さて、このB型の存在をどのように考えればいいでしょうか?
それを説明する2つの仮説があります。

1)イントログレッション(遺伝子浸透、遺伝子移入)仮説
簡単にいってしまうと、雑種が原因。
ヨシガモとオカヨシガモが種として別々になった後に、ヨシガモの♀がオカヨシの♂を選び子をもうける。その子がアメリカに渡りそこでまたオカヨシの♂と子をもうける。こうしてアジアのB型がアメリカに浸透する。ヨシガモの♂のミトコンドリアは、オカヨシの卵に侵入できないので、この組み合わせはイントログレッションには関与しません。

2)ソート不完全仮説。sortingが何と訳されているのか知らないので、とりあえずソートにしました。
これによると、オカヨシとヨシガモとが分かれてからあまり時間が経過していないので、互いに持っている遺伝子が十分にソート(整理)されていないと考えられます。
ちょっとわかりにくいと思います。次のように考えるとどうでしょう。ヒトの血液型の比率には国ごとにかなりの差があります。例えばインドはB型が1番多く41%にもまります(A型は21%)。一方、フランスで1番多いのはA型で45%(B型はたったの9%)。東洋タイプはB型、西洋タイプがA型といえます。非現実的ではありますが、東洋と西洋でまったく交流がなくなったとしましょう。さらに、東洋ではB型が選択され、西洋ではA型が選択されるとしましょう。十分時間が経過すると、それぞれB型のみ、A型のみになりますが、その過程ではA、Bが混在します。混在が見られる状態がソート(整理)不完全です。
オカヨシとヨシガモの共通の祖先にA型とB型がともにあり(多型という)、種分化後十分に時間が経っていないので両者が混在しているわけです。

さて、最近確からしい答えが出ました。mtDNAだけでなく、核DNAのイントロン(遺伝子の不要な部分)のデータも参考にして定量的に、イントログレッション仮説が正しい、と。

mtDNAの系統が、種の系統と一致しない現象はmtDNAの側系統性といいます。
大形カモメ類のmtDNAの側系統性は極め付きです。
例えば、L.mongolicusのハプロタイプがシロカモメ型であったり、barabensisに西洋のセグロカモメ型がみられたり。しかし、絡まった糸のような大形カモメ類の系統も次第にほぐされつつあります。そのうち紹介します。

参考文献は、
Evolution(2007)61-8:1992
The Auk(2002)119(3):603
です。

画像
ヨシガモ♂繁殖羽に換羽中071104印旛沼。
沼の真ん中辺りにいるので観察はかなり厳しい。

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