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zoom RSS 「ハイネの」カモメ(亜種ロシアカモメ/ニシシベリアカモメ)とは何か(改訂170310)

<<   作成日時 : 2016/02/10 23:35   >>

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ただカモメの亜種ヘイネイとはなにか?
Larus canus heinei について、関連文献の出版順で振り返ってみたい。
清棲大図鑑で、L.c.heineiの分布について詳述されている。北はシベリア北部のオビ川、エニセイ川の渓谷北極圏、レナ川渓谷の北緯70°以南、コリマ川渓谷の北緯68°40′以南から、南はキルギス草原、アルタイ山脈、カンガイ(ハンガイ)山脈、ケンケイ山脈(?)、モンゴルの北西部、スタノボイ山脈まで、東はオホーツク海南岸、アナジル湾までで繁殖し、冬季は満州、中国の沿岸まで渡来する。この分布域は興味深いことに後述のOlsen & LarssonのGullsの分布図とほぼ一致している。一方、形態の特徴には言及されていない。

BWP(Handbook of the Birds of Europe, the Middle East and North Africa: the Birds of the Western Palearctic vol3)(1983)によれば、カモメCommon Gull L.canusL.c.canusL.c.heineiL.c.kamtschatschensis、そしてL.c.brachyrhynchusの4亜種からなる。heineiは基亜種より大きく、成鳥の背は基亜種より明らかに暗色で、西部(ドゥヴィナ川)の標本より東部(エニセイ川)の標本の方がやや濃いとされ、クラインをなすとされている。幼鳥は基亜種と同様である。一方、kamtschatschensis亜種カモメはheineiと同じくらい濃いかやや明るく、基亜種と同じくらい明るい個体もいる、と記されている。幼鳥は基亜種やheineiより斑が多く褐色が濃い。BWPによれば、heineiは亜種カモメよりやや濃いか同程度ということになる。

1992年、氏原巨雄さん・道昭さんの『カモメ識別ガイド』が出版される。この書でheineiが登場しているのであるが、(私の記憶によれば)ウォッチャーにあまり注目されることはなかった。『カモメ識別ガイド』によれば、
亜種カモメが4亜種中で最大である。中部、西部シベリア産heineiも飛来している可能性がある。亜種カモメはheineiと比較して、やや大きく、背はやや薄い、とされている。

HBW(1996)によれば、BWPと同じく、カモメMew Gull L.canusL.c.canusL.c.heineiL.c.kamtschatschensis、そしてL.c.brachyrhynchusの4亜種からなる。L.c.heineiは、カニン半島、モスクワ・エリアから東へ中央シベリア北部、レナ川まで分布する。4亜種の成鳥でheineiが最も暗色である、とされた。

日本のウォッチャーにheineiが一般に知られるようになったのは、真木&大西著『日本の野鳥590』(2000)で、亜種ロシアカモメ(新称)の渡来の可能性が取り上げられてからである。同書では亜種カモメL.c.kamtschatschensisより小型とされている(背の色の濃さへの言及はない)。

氏原父子の『カモメ識別ハンドブック』(2002)では、西シベリアの亜種heineiと思われるものも小数見られ、背の灰色がウミネコに近い濃さ、と記され、亜種heinei(?)成鳥冬羽が図示された。濃いカモメはHBWと整合していた。ウォッチャーは、以前からカモメに濃いのがいることは認識していたので、あれがheineiだったのかと合点がいった。

そしてOlsen & LarssonのGulls(2003)で、Common Gull L.c.heineiの齢毎の形態が詳述された(比較は基亜種とされていて亜種カモメとはされていないのでややこしい)。そこには、heineiの成鳥の背の灰色の濃さ(コダック・グレー・スケールで6-8)は、基亜種(5-6)より濃く、亜種カモメL.c.kamtschatschensis(6-9)と同等かやや薄い、と記されていた。濃いカモメと認識していたウォッチャーはとまどった。
同書によれば、初列風切のパターンは亜種カモメと同様とされるが、翼のパターンの比較図を見ると、heineiのほうが内側初列風切の先の白線が細く、さらに中間部初列の白いムーンが小さく描かれている(これらがフィールドでの識別に有効かは不明)。嘴と脚も亜種カモメと同様。目がやや大きく暗色(亜種カモメは黄色が少なくない)。
第1回冬羽は、亜種カモメにくらべて、特に胸側、脇、そして下尾筒に斑が少なく、さらに腰から上尾筒に斑がなく、全体的に淡色に見える。翼下面も淡色に見える。尾の暗色帯はより狭い。T1の暗色部の長さはheineiが40-51mmであるのに対して亜種カモメでは55-60mmとなっている(モンゴルセグロカモメとセグロカモメの関係を思い出させる)。尾羽の先端の白はより狭い。外側尾羽暗色帯の内弁は亜種カモメのように白くはならない(尾の暗色帯が外側でかすれた感じにならない)。
第2回冬羽は、成長が早く亜種カモメより成鳥に近い羽衣になる。亜種カモメでは雨覆、三列風切に灰色はあまり出ないが、heineiでは雨覆から三列まで灰色になる(成長についてもモンゴルセグロカモメとセグロカモメの関係を思い出させる)。
越冬地は、バルト海、黒海、北西ヨーロッパで、ペルシャ湾からパキスタン(少数)、韓国、香港でも記録がある。

Howell & DunnのGulls(2007)によれば、背の濃さはheineiが5.5-7、亜種カモメが6−7.5である。亜種カモメとのインターグレード(交雑)と北日本での越冬の可能性について言及されている。

BrazilのBIRDS OF EAST ASIA(2009)にheineiの図が載った。しかしこの図はOlsen & LarssonのGullsのCommn Gullの流用である。亜種は明記されていないので基亜種と考えられる図をheineiとして使用することに違和感はあるが、基亜種とheineiには差がほぼないので実質的には差障りはないと思われる。分布については、繁殖は東はレナ川までで、冬季は中国、日本で見られる、とされている。亜種カモメはheineiより成長が遅く、幼羽が冬季の終わりまで残る。ほとんどのheineiは第2回冬羽でほぼ成鳥と同様の羽衣となるが、雨覆に灰色でない羽が残る個体もある。

カモメ識別ハンドブック改訂版』(2010)では、西シベリアの亜種heineiも渡来している可能性があるが野外での識別は現段階では困難とし、初版でheinei(?)としていた図は亜種kamtschatschensisに変更された。

日本鳥類目録改訂第7版』(2012)では、heineiはニシシベリアカモメとされ、1989年7月の石川県での記録が記載された。

この亜種heineiの呼称については、ウォッチャーの間ではこれまで亜種小名のラテン語読みのヘイネイで通ってきた。『目録』がニシシベリアカモメを採用したので、以降の出版物ではこれが使われることが多くなることが予想される。しかし、heineiをニシシベリアと称するのは不適切と考える。なぜなら、OlsenのGullsの分布図を見ると西は東ヨーロッパ平原から東はハバロフクス地方まで達する広大なもので、heineiの分布は西シベリアに限定されるわけではないからである。むしろ『590』で先んじて提案されていたロシアカモメの方が適切と思われる。なぜニシシベリアなのか不明である。とりあえず本ブログでは「ヘイネイ」と表記する。ただヘイネイにも引っかかるところがある。亜種小名のheineiはheineの形容詞の女性形であり、Heineはドイツ系の人名であろうから本来「ハイネ」と発音すべきと思われる。「ハイネ」カモメは個人的にいかしているとは思うが、ロシアカモメに先取権を与えるのが妥当だろう。

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Kamchatka Gulls first winter 160206 Japan.
カモメの第1回冬羽の羽衣は薄いのから濃いのまで換羽の進んだものから遅いものまで、他のカモメに比べより多様である。分布を見る限り、ホイグリンカモメやモンゴルセグロカモメが日本に渡ってくることよりヘイネイが渡って来ないとは思えない。この日ただカモメは100羽以上いたので、少なくとも数羽はいたかもしれない。いずれも撮影は茨城県。

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Kamchatka Gulls (or intergrade) first winter 151121/150123 Japan.
こうした腰の白いカモメ第1回は珍しくないが、亜種カモメの個体差かあるいは換羽の遅い早いか、それともこれが腰が白い(かつテールバンドがモンゴルセグロのように狭い)とされるヘイネイとの中間型なのか?上11月21日、中下1月23日、上中千葉県、下茨城県で撮影。

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Kamchatka Gulls second winter 160206 Japan.
ヘイネイの第2回は成鳥の羽衣に近いとされるが、フィールドでの亜種カモメとの識別点として有効かどうかは不明だ。茨城県で撮影。
成鳥は識別可能なのだろうか?

部分的に修正170408
誤字訂正171002

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亜種ヘイネイ(ロシアカモメ/ニシシベリアカモメ)第1回冬羽170105千葉県(改訂170108)
Tails of Larus canus complex 170105 Japan. 画像1:亜種ロシアカモメ(ニシシベリアカモメ、以下ロシア)Russian Common Gull L.c.heinei と思われる個体の第1回冬羽の尾のパターン。画像2、3:亜種カモメ(以下カモメ)Kamchatka Gull L.c.kamtschatchensisと思われる個体の第1回冬羽の尾のパターン。T6owは最外側尾羽(T6)の外弁を、UTCは上尾筒(の先端)を示す。UTC端を示す矢印と尾の黒... ...続きを見る
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2017/01/08 10:28

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